精神保健福祉法の歴史は以下の記事でやりました。

精神衛生法→精神保健法→精神保健福祉法と変遷してきたのでしたね。
ここでは精神保健福祉法の中身について詳しく見ていきます。
精神保健福祉法
精神保健福祉法の正式名称は「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」です。
次のことが定められています。
・精神保健福祉法の目的
・精神保健福祉法の対象とする精神障害者
・精神保健福祉センターの設置
・地方精神保健福祉審議会及び精神医療審査会
・精神保健指定医の指定
・精神科病院の設置
・医療及び保護(精神障害者の入院形態)
・精神科病院における処遇
・精神保健福祉手帳
・精神保健福祉相談員の任命
・精神障害者社会復帰促進センターの指定
その中から「精神保健福祉手帳」について取り上げます。
精神保健福祉手帳
対象
統合失調症やうつ病、高次脳機能障害や発達障害などの精神障害がある方が対象です。
ただし、知的障害がある場合は対象外です。

知的障害と発達障害の両方あれば、療育手帳と精神保健福祉手帳の両方の対象となります。
等級
2級:精神障害であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級:精神障害であって、日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの
判定
等級の判定などは都道府県や政令指定都市が設置する精神保健福祉センターで行われます。
申請
次の3点を市町村窓口へ
①指定の申請書
②診断書
③本人の写真
※申請には初診日から6か月以上経過している必要があります。
交付
窓口は市町村にありますが、都道府県知事が交付します。
手帳所持のメリット
公共料金等の割引
NHK受信料の減免などがあります。
全国共通ではないですが、自治体によって鉄道料金、携帯電話、上下水道料金などの割引が受けられることもあります。
税金の控除・減免
所得税、住民税、相続税の控除、自動車税・自動車取得税の軽減(手帳1級の方)が受けられます。
その他
・生活福祉資金の貸付が受けられます。
・手帳所持者を事業者が雇用した際の、障害者雇用率へのカウントができます。

自立支援医療(精神通院医療)による医療費助成や、障害者総合支援法による障害福祉サービスは、精神障害者であれば手帳の有無にかかわらず受けられます。
精神保健福祉手帳と並んで、身体障害者手帳、療育手帳については以下の記事で。

過去問
第21回 問題18
次のうち、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に定められているものとして、正しいものを2つ選びなさい。
1 対象となる精神障害者の定義
2 障害支援区分
3 国民の精神保健の向上を図ること
4 地域移行支援の給付
5 社会復帰調整官の役割
1 対象となる精神障害者の定義
正しいです。
第五条「この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。」
2 障害支援区分
間違いです。
これは障害者総合支援法に定められています。
3 国民の精神保健の向上を図ること
正しいです。
第一条「この法律は、精神障害者の医療及び保護を行い、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律と相まつてその社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行い、並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによつて、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図ることを目的とする。」
4 地域移行支援の給付
間違いです。これは障害者総合支援法に定められています。
5 社会復帰調整官の役割
間違いです。これは医療観察法に定められています。
第21回 問題 61
精神障害者保健福祉手帳に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 申請者の居住地を管轄する市町村長が交付する。
2 申請に必要な診断書は、精神保健指定医による作成が必要である。
3 申請には、申請者本人の顔写真の添付が必要である。
4 等級の判定は、地方精神保健福祉審議会において行われる。
5 申請は、初診日から 1年6か月以上経過している必要がある。
1 申請者の居住地を管轄する市町村長が交付する。
間違いです。都道府県知事が交付します。
2 申請に必要な診断書は、精神保健指定医による作成が必要である。
間違いです。精神障害者保健福祉手帳の申請に必要な診断書は、初診日から6か月以上経過後、「精神保健指定医並びに治療に従事する医師」が記載したものと規定されています。精神保健指定医に限定されていません。
3 申請には、申請者本人の顔写真の添付が必要である。
これが正解です。
4 等級の判定は、地方精神保健福祉審議会において行われる。
間違いです。等級の判定は、都道府県や指定都市が設置している精神保健福祉センターが実施します。
5 申請は、初診日から 1年6か月以上経過している必要がある。
間違いです。初診日から6か月以上経過している必要があります。
第19回 問題140
障害者手帳に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。1 療育手帳は、発達障害者支援法に基づき交付される。2 療育手帳の交付の申請は、知的障害者更生相談所長に対して行う。3 身体障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には、身体障害者手帳の交付を受ける必要がある。4 手足の麻痺や音声・言語障害のない高次脳機能障害は、身体障害者手帳の交付対象である。5 精神障害者保健福祉手帳の更新は、5年ごとに行わなければならない。
1 療育手帳は、発達障害者支援法に基づき交付される。
誤りです。療育手帳は1973年の厚生事務次官通知「療育手帳制度について」に基づいています。
2 療育手帳の交付の申請は、知的障害者更生相談所長に対して行う。
誤りです。福祉事務所に申請し(障害児は児童相談所)、都道府県知事が交付します。
3 身体障害者が「障害者総合支援法」のサービスを利用する場合には、身体障害者手帳の交付を受ける必要がある。
正しいです。
4 手足の麻痺や音声・言語障害のない高次脳機能障害は、身体障害者手帳の交付対象である。
誤りです。高次脳機能障害は精神障害者保健福祉手帳の対象です。
5 精神障害者保健福祉手帳の更新は、5年ごとに行わなければならない。
誤りです。精神障害者保健福祉手帳の更新は2年ごとです。
次の記事
次は、精神保健福祉センター等の福祉関係機関について。

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