スーパービジョン
ソーシャルワークの三大技術では、関連援助技術に分類されていたスーパービジョン。
スーパービジョンは、専門職としての資質向上を目的として、指導者(スーパーバイザー)が対人援助職者(スーパーバイジー)に教育する過程です。
スーパービジョンの6種類の形態と、3種類の機能を押さえましょう。

スーパーバイザーとスーパーバイジー
指導(supervision)をする人を「スーパーバイザー(supervisor)」といいます。
指導(supervision)される人を「スーパーバイジー(supervisee)」といいます。

試験(examination)を受ける人を受験者(examinee)というね。受け身形には「ee」がつくの。
スーパービジョン6種類の形
個別スーパービジョン
個別スーパービジョンは、スーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うスーパービジョンです。
グループスーパービジョン
グループスーパービジョンは、1人のスーパーバイザーと複数のスーパーバイジーで行うスーパービジョンです。
ユニットスーパービジョン
ユニットスーパービジョンは、複数のスーパーバイザーが1人か複数のスーパーバイジーに対して行うスーパービジョンです。

職員会議や事例検討会などだね。
ライブスーパービジョン
ライブスーパービジョンは、実際のケースワーク場面にスーパーバイザーが同席して行うスーパービジョンです。
ピアスーパービジョン
ピアスーパービジョンは、仲間同士のみで行う(スーパーバイザーはいない)スーパービジョンです。

ピアカウンセリングとかのピアだね。「仲間」という意味だよ。
セルフスーパービジョン
セルフスーパービジョンは、自分自身で振り返りを行うスーパービジョンです。
スーパーバイザー | スーパーバイジー | |
---|---|---|
個人スーパービジョン | 1人 | 1人 |
グループスーパービジョン | 1人 | 複数 |
ユニットスーパービジョン | 複数 | 1人~複数 |
ライブスーパービジョン | 同席 | 実際のケースワーク場面 |
ピアスーパービジョン | 無 | 仲間同士 |
セルフスーパービジョン | 無 | 自分で振り返り |
スーパービジョン3種類の機能
スーパービジョンには以下の3種類の機能があります。
教育的機能
教育的機能は、知識や技術を提供してスーパーバイジーを教育するという意味での機能です。
支持的機能
支持的機能は、自己覚知を促したりバーンアウトを防止するなど、スーパーバイジーを支える機能です。
管理的機能
管理的機能は、業務量を調整するなどしてスーパーバイジーが力を発揮できるよう環境を整える機能です。
パラレルプロセス
パラレルプロセスとは、ソーシャルワーカーとクライエントとの関係とよく似た状況が、スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係において起こることです。

パラレルというのは「平行した」という意味だよ。パラレルワールドとかあるよね。
コンサルテーション
コンサルテーションは、専門性を尊重し、その専門性を考慮しながら自らの専門的知識を助言することです。
クライエントに対する直接的な援助ではなく、助言などの間接的援助です。
コンサルタントとコンサルティ
助言(Consultation)をする人を「コンサルタント(consultant)」といいます。
助言(Consultation)される人を「コンサルティ(consultee)」といいます。
スーパービジョンとコンサルテーションの違い
スーパービジョンとコンサルテーションはどちらも関連援助技術ですが、スーパービジョンは同一職種で先輩が後輩に指導等をするのに対して、コンサルテーションは他職種の専門家がアドバイスや提案をします。
スーパービジョン | コンサルテーション | |
---|---|---|
職種 | 同職種 | 他職種 |
上下関係 | あり | なし |
支援する側 | スーパーバイザー | コンサルタント |
支援される側 | スーパーバイジー | コンサルティ |
機能 | 教育、支持、管理 | 教育、支持 |
過去問
第23回 問題46
次の記述のうち、コンサルティの説明として、適切なものを2つ選びなさい。
1 コンサルタントから監督及び指導を受ける。
2 業務上の課題を抱えた個人、集団、組織、地域社会である。
3 コンサルタントがクライエントに対して直接的な援助を行う。
4 個人の抱えた私的な悩みをコンサルタントに伝え、相談する。
5 得られた助言の内容は、自ら評価し、採用するかを決める。
1 コンサルタントから監督及び指導を受ける。
間違いです。監督は受けません。
2 業務上の課題を抱えた個人、集団、組織、地域社会である。
正しいです。
3 コンサルタントがクライエントに対して直接的な援助を行う。
間違いです。直接的援助ではなく間接的援助です。
4 個人の抱えた私的な悩みをコンサルタントに伝え、相談する。
間違いです。個人の私的な悩みではなく、業務上の課題です。
5 得られた助言の内容は、自ら評価し、採用するかを決める。
正しいです。
第22回 問題43
次の記述のうち、精神保健福祉士がコンサルティに対して行うコンサルテーションとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 組織内の運営方針について説明する。
2 勤務態度などの職務を管理する。
3 クライエントの自宅に同行して、クライエントと面談する。
4 クライエントの社会環境を理解するためのエコマップを提示する。
5 アドバイスに従ってクライエントを支援するように指導する。
選択肢4が正解です。
第24回 問題44
- 次の記述のうち、相談援助活動におけるコンサルテーションに関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 コンサルテーションは、コンサルティの専門性に関する支援の振り返りを促すことである。
2 コンサルタントは、助言した結果に責任を負う。
3 コンサルティは、取り上げる問題に応じてコンサルタントを選定する。
4 コンサルタントは、監督・指導する管理的機能を持つ。
5 コンサルティは、受けた助言を採用する際に、コンサルタントの許可を得る。
1 コンサルテーションは、コンサルティの専門性に関する支援の振り返りを促すことである。
誤りです。
2 コンサルタントは、助言した結果に責任を負う。
誤りです。コンサルタントの助言を採用するかどうかはコンサルティ自身の問題なので、コンサルタントは責任を負いません。
3 コンサルティは、取り上げる問題に応じてコンサルタントを選定する。
正しいです。
4 コンサルタントは、監督・指導する管理的機能を持つ。
誤りです。コンサルテーションではコンサルタントとコンサルティは対等の立場なので、監督や指導といった管理的機能はありません。これはスーパービジョンの内容です。
5 コンサルティは、受けた助言を採用する際に、コンサルタントの許可を得る。
誤りです。コンサルタントの許可は必要ありません。
第17回 問題45
D精神保健福祉士は、精神科医療機関に入職以来、精神療養病棟に4年間勤務し、統合失調症の患者を担当していた。今回、デイ・ケア部門に異動し、特にうつ病患者の復職支援を中心とした業務を担うこととなった。異動後、うつ病への支援と早期復職を求める企業側の意向との調整で、様々な悩みや不安を抱えることとなり、上司のE精神保健福祉士(経験20年)に相談した。次の記述のうち、この相談を受けたE精神保健福祉士がD精神保健福祉士を支えるために企画したスーパービジョンとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 社会人として果たさなければならない責務について研修を受けさせる。2 復職先企業側の職員を含めたグループスーパービジョンを実施する。3 同期の職員でのピアスーパービジョンを実施する。4 同期の精神保健福祉士によるライブスーパービジョンを実施する。5 置かれている状況や課題の言語化を通して整理できるようにさせる。
1 社会人として果たさなければならない責務について研修を受けさせる。
誤りです。このような内容は求められていません。
2 復職先企業側の職員を含めたグループスーパービジョンを実施する。
誤りです。D精神保健福祉士個人の悩みなのでグループスーパービジョンは適切ではありません。
3 同期の職員でのピアスーパービジョンを実施する。
誤りです。このような悩みではスーパーバイザーが必要です。
4 同期の精神保健福祉士によるライブスーパービジョンを実施する。
誤りです。これはピアスーパービジョンになります。
5 置かれている状況や課題の言語化を通して整理できるようにさせる。
これが正解です。
第20回 問題33
次の事例を読んで、問題に答えなさい。〔事 例〕
Hさん( 22歳、精神保健福祉士 )は大学を卒業し、4月から精神科病院に勤務している。就職後3か月間、各病棟での研修と各職種からの説明を受けることによって、病棟機能とその役割、各職種の業務を知り、病院組織についての理解が進んだ。その後、相談室主任であるJさん(42歳、精神保健福祉士)担当の病棟に配属され、分からないことがあると尋ねることができ、少しずつではあるが業務が行えるようになってきた。半年が経過し、相談業務を自分なりにできると感じ始めていたHさんは、ある日、担当しているKさん(48歳、統合失調症)と退院後の生活について面接をした。しかし、その面接でKさんを怒らせてしまい、そのことをJさんに相談した。
Jさんからは、Kさんとの面接をどのように進めてきたか尋ねられた。HさんはKさんが失敗しないために、本人に適していると考えたサービスを利用するように説得しようとしたと話した。それを聞いたJさんは、Hさんが精神保健福祉士として専門的な動きができていないと感じ、スーパービジョンへの参加を提案した。Hさんがスーパービジョンに参加すると、固定的なスーパーバイザーを置かず、数名の精神保健福祉士がスーパーバイザーとスーパーバイジーの両方の役割を行いながら、精神保健福祉士が持つべき支援の視点や、精神保健福祉士としての価値について意見を出し合い検討されていた。次のうち、Hさんが参加したスーパービジョンとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 ピアスーパービジョン
2 ライブスーパービジョン
3 個人スーパービジョン
4 グループスーパービジョン
5 セルフスーパービジョン
「固定的なスーパーバイザーを置かず、数名の精神保健福祉士がスーパーバイザーとスーパーバイジーの両方の役割を行いながら」とありますので、選択肢1のピアスーパービジョンです。
第26回 問題47
- 精神科病院に入職して4か月たつG精神保健福祉士(22歳)は、入職8年目のH精神保健福祉士から、定期的にスーパービジョンを受けている。
今日は、H精神保健福祉士が、G精神保健福祉士と入院患者との面接に同席した。面接が終わると、2人は相談室に戻り、振り返りを行った。H精神保健福祉士は、「よいタイミングで相づちを入れて話を引き出していましたね」と話した。G精神保健福祉士は、「次の話題へどのように進めればいいのか迷いました。あれでよかったのでしょうか」とH精神保健福祉士に話した。そこで、H精神保健福祉士は気づきを促した。
次のうち、この場面で行われたスーパービジョンの形態に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 ピア・スーパービジョン
2 ライブ・スーパービジョン
3 セルフ・スーパービジョン
4 ユニット・スーパービジョン
5 グループ・スーパービジョン
事例では実際の援助場面を共有しながらスーパービジョンを実施していますので、選択肢2のライブスーパービジョンが正解です。
第26回 問題48
- Jさん(55歳)は、精神科病院を退院後、地域活動支援センターを利用しながら在宅生活を継続している。最近、健康診断を受けた結果、専門病院の受診を勧められ、初期の大腸がんが見つかった。地域活動支援センターのK精神保健福祉士は、Jさんの同意を得た後、がん治療を担当する主治医から、「治療をしていく中で、腹痛や嘔吐、血便、便秘などが出現することが予想されるため、支援を行う際は体調に気を付けて欲しい」との情報を得た。そこで、個別支援に反映させていくこととした。 次のうち、K精神保健福祉士と主治医との間で行われたこととして、適切なものを1つ選びなさい。
1 アサーション
2 フィードバック
3 スクリーニング
4 カンファレンス
5 コンサルテーション
事例では精神保健福祉士が、医師という他領域の専門家から援助に必要な専門的助言を受けていますので、選択肢5のコンサルテーションになります。
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