医療観察制度の3職種
医療観察制度に登場する3職種、精神保健審判員、精神保健参与員、社会復帰調整官の違いをしっかりと押さえましょう。
下図にあるように、精神保健審判員と精神保健参与員は地方裁判所側で審判を担います。
一方で社会復帰調整官は保護観察所に配属され、対象者の社会復帰を支援します。
全く役割が異なりますのでしっかりと区別しましょう。

社会復帰調整官
社会復帰調整官は、保護観察所に配置され、医療観察法における生活環境の調査・調整、精神保健観察等を行います。地方更生保護委員会にも配置されます。
入院中のCPA会議を主催し、入院当初から退院後の支援体制構築に向けて、家族や関係者等と指定入院医療機関が話し合います。
精神保健審判員
精神保健審判員は、医療観察法における対象者(心神喪失・心神耗弱の状態で重大な他害行為を行い、不起訴処分または無罪が確定した人)の処遇について、裁判官との合議体の中で、医療観察法に基づく医療・観察の要否について医学的見地から提言を行う精神科医です。
厚生労働大臣が作成した精神保健判定医名簿の中から、裁判所が事件ごとに任命(指定)します。
精神保健参与員
精神保健参与員は、医療観察法における審判において精神保健福祉の観点から必要な意見を述べます。
厚生労働大臣が作成した名簿の中から、事件ごとに裁判所が任命(指定)します。
.png)
精神保健参与員は合議体の構成員じゃないから、審判には参加できなくて意見を述べるだけだよ。
過去問
第16回 問題68
社会復帰調整官に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 保護観察所には、社会復帰調整官を配置することが望ましいとされている。
2 当初審判では、生活環境の調査を基に対象者の処遇を決定する。
3 入院中から退院後の円滑な地域移行を目指し、生活環境の調整を行う。
4 資格要件は、対人援助にかかわる国家資格を有し、かつ3年以上の業務経験のある者と規定されている。
5 審判において、精神保健福祉の観点から必要な意見を述べる。
1 保護観察所には、社会復帰調整官を配置することが望ましいとされている。
間違いです。社会復帰調整官は配置義務ありです。
2 当初審判では、生活環境の調査を基に対象者の処遇を決定する。
間違いです。生活環境の調査は当初審判ではなく審判後です。
3 入院中から退院後の円滑な地域移行を目指し、生活環境の調整を行う。
これが正解です。
4 資格要件は、対人援助にかかわる国家資格を有し、かつ3年以上の業務経験のある者と規定されている。
間違いです。3年以上ではなく8年以上です。
5 審判において、精神保健福祉の観点から必要な意見を述べる。
間違いです。これは精神保健参与員の役割です。
第24回 問題68
- 次の記述のうち、「医療観察法」における社会復帰調整官に関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 通院による処遇終了が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
2 通院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
3 当初審判中の者に対して、生活環境の調整を行う。- 4 入院による処遇が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
- 5 入院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
(注) 「医療観察法」とは、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律」のことである。
1 通院による処遇終了が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
誤りです。生活環境の調査は、検察官によって医療観察法の処遇申立てが行われ、地方裁判所がそれを受けて、保護観察所に対して生活環境の調査を依頼します。
2 通院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
正しいです。
3 当初審判中の者に対して、生活環境の調整を行う。
誤りです。生活環境の調整は、入院処遇の早期から行うものです。
4 入院による処遇が決定された者に対して、生活環境の調査を行う。
誤りです。生活環境の調査は処遇決定前に行われるものです。
5 入院による処遇が決定された者に対して、精神保健観察を行う。
誤りです。精神保健観察は通院処遇中に行われるものです。
第22回 問題64
精神保健参与員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 地方検察庁により任命される。
2 鑑定入院における鑑定書の内容に関する妥当性を審査する。
3 通院処遇時の指定通院医療機関との連絡・調整を行う。
4 厚生労働大臣が作成した名簿に基づき選ばれる。
5 入院処遇時におけるCPA会議に出席し、意見を述べる。
1 地方検察庁により任命される。
間違いです。地方裁判所から任命されます。
2 鑑定入院における鑑定書の内容に関する妥当性を審査する。
間違いです。これは精神保健審判員の役割です。
3 通院処遇時の指定通院医療機関との連絡・調整を行う。
間違いです。これは社会復帰調整官です。
4 厚生労働大臣が作成した名簿に基づき選ばれる。
これが正解です。
5 入院処遇時におけるCPA会議に出席し、意見を述べる。
間違いです。精神保健参与員は、CPA会議で意見を述べるのではなく審判に参加して意見を述べます。
CPA会議とは、入院処遇者に対して入院当初から退院先を含めた地域での支援体制を考えるために、社会復帰調整官や家族を含め退院後の支援を担う関係機関の支援者と指定入院医療機関が集まり話し合う会議です。
第19回 問題69
精神保健参与員の役割に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 当初審判において、精神障害者の保健や福祉に関する専門家の立場から意見を述べる。
2 入院処遇において、対象者の権利や義務の説明を行う。
3 入院処遇において、対象者の退院許可等に関する申立てを行う。
4 通院処遇において、ケア会議に出席する。
5 通院処遇において、処遇終了や通院期間の延長に関する申立てを行う。
1 当初審判において、精神障害者の保健や福祉に関する専門家の立場から意見を述べる。
これが正解、精神保健参与員の役割です。
2 入院処遇において、対象者の権利や義務の説明を行う。
これは、精神保健福祉士の役割です。
3 入院処遇において、対象者の退院許可等に関する申立てを行う。
これは、入院先の精神保健指定医の診察の結果に基づき、指定入院医療機関の管理者が行います。
4 通院処遇において、ケア会議に出席する。
ケア会議に出席するのは、本人や家族のほか、社会復帰調整官、指定通院医療機関の職員、精神保健福祉センター等の職員などなどです。
精神保健参与員は出席しません。
5 通院処遇において、処遇終了や通院期間の延長に関する申立てを行う。
これは、保護観察所長の役割です。
第25回 問題67
精神保健参与員に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 審判の合議体の構成員である。
2 生活環境調査を行う。
3 保護観察所に配置される。
4 CPA会議を主催する。
5 審判期日で意見を述べる。
1 審判の合議体の構成員である。
誤りです。合議体は裁判官1人と精神保健審判員1人で構成され、精神保健参与員は含まれません。
2 生活環境調査を行う。
誤りです。生活環境調査は社会復帰調整官の役割です。
3 保護観察所に配置される。
誤りです。保護観察所に配置されるのは社会復帰調整官です。
4 CPA会議を主催する。
誤りです。CPA会議を主催するのは社会復帰調整官です。
5 審判期日で意見を述べる。
これが正解です。
次の記事
次は、更生保護制度について。
コメント