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【国際疾病分類ICD】F群を俯瞰する

ICD人体と疾病
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ICD-10による疾病の分類

国際疾病分類ICDは世界保健機関WHOの勧告により国際的に統一した基準で定められた疾病の分類です。

1900年に初めて国際会議で承認されて以降、WHOにおいて約10年ごとに改訂が行われ、第10版となるICD-10は1990年にWHO総会において承認されました。

ICD-10では、AからZまでのコードで疾病が分類されています。

A00-B99 感染症および寄生虫症
C00-D48 新生物<腫瘍>
D50-D89 血液および造血器の疾患ならびに免疫機構の障害
E00-E90 内分泌,栄養および代謝疾患
F00-F99 精神および行動の障害
G00-G99 神経系の疾患
H00-H59 眼および付属器の疾患
H60-H95 耳および乳様突起の疾患
I00-I99 循環器系の疾患
J00-J99 呼吸器系の疾患
K00-K93 消化器系の疾患
L00-L99 皮膚および皮下組織の疾患
M00-M99 筋骨格系および結合組織の疾患
N00-N99 尿路性器系の疾患
O00-O99 妊娠,分娩および産じょく<褥>
P00-P96 周産期に発生した病態
Q00-Q99 先天奇形,変形および染色体異常
R00-R99 症状,徴候および異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの
S00-T98 損傷,中毒およびその他の外因の影響
V01-Y98 傷病および死亡の外因
Z00-Z99 健康状態に影響をおよぼす要因および保健サービスの利用
U00-U99 特殊目的用コード

F00-F99 精神および行動の障害

ICD-10で、F群(F00-F99)は「精神および行動の障害」に大分類されています。
このF群は以下のように、F0~F9まで分類され、さらに細かく疾患名が分けられています。
詳しく見てみましょう。

F0 症状性を含む器質性精神障害

F00 アルツハイマー病の認知症
F01 血管性認知症
F02 他に分類されるその他の疾患の認知症
F03 詳細不明の認知症
F04 器質性健忘症候群,アルコールその他の精神作用物質によらないもの
F05 せん妄,アルコールその他の精神作用物質によらないもの
F06 脳の損傷及び機能不全並びに身体疾患によるその他の精神障害
F07 脳の疾患,損傷及び機能不全による人格及び行動の障害
F09 詳細不明の器質性又は症状性精神障害

F1 精神作用物質使用による精神及び行動の障害

F10 アルコール使用<飲酒>による精神及び行動の障害
F11 アヘン類使用による精神及び行動の障害
F12 大麻類使用による精神及び行動の障害
F13 鎮静薬又は催眠薬使用による精神及び行動の障害
F14 コカイン使用による精神及び行動の障害
F15 カフェインを含むその他の精神刺激薬使用による精神及び行動の障害
F16 幻覚薬使用による精神及び行動の障害
F17 タバコ使用<喫煙>による精神及び行動の障害
F18 揮発性溶剤使用による精神及び行動の障害
F19 多剤使用及びその他の精神作用物質使用による精神及び行動の障害

F2 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害

F20 統合失調症
F21 統合失調症型障害
F22 持続性妄想性障害
F23 急性一過性精神病性障害
F24 感応性妄想性障害
F25 統合失調感情障害
F28 その他の非器質性精神病性障害
F29 詳細不明の非器質性精神病

F3 気分[感情]障害

F30 躁病エピソード
F31 双極性感情障害<躁うつ病>
F32 うつ病エピソード
F33 反復性うつ病性障害
F34 持続性気分[感情]障害
F38 その他の気分[感情]障害
F39 詳細不明の気分[感情]障害

F4 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害

F40 恐怖症性不安障害
F41 その他の不安障害
F42 強迫性障害<強迫神経症>
F43 重度ストレスへの反応及び適応障害
F44 解離性[転換性]障害
F45 身体表現性障害
F48 その他の神経症性障害

F5 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群

F50 摂食障害
F51 非器質性睡眠障害
F52 性機能不全,器質性障害又は疾病によらないもの
F53 産じょく<褥>に関連した精神及び行動の障害,他に分類されないもの
F54 他に分類される障害又は疾病に関連する心理的又は行動的要因
F55 依存を生じない物質の乱用
F59 生理的障害及び身体的要因に関連した詳細不明の行動症候群

F6 成人の人格及び行動の障害

F60 特定の人格障害
F61 混合性及びその他の人格障害
F62 持続的人格変化,脳損傷及び脳疾患によらないもの
F63 習慣及び衝動の障害
F64 性同一性障害
F65 性嗜好の障害
F66 性発達及び方向づけに関連する心理及び行動の障害
F68 その他の成人の人格及び行動の障害
F69 詳細不明の成人の人格及び行動の障害

F7 知的障害〈精神遅滞〉

F70 軽度知的障害〈精神遅滞〉
F71 中等度知的障害〈精神遅滞〉
F72 重度知的障害〈精神遅滞〉
F73 最重度知的障害〈精神遅滞〉
F78 その他の知的障害〈精神遅滞〉
F79 詳細不明の知的障害〈精神遅滞〉

F8 心理的発達の障害

F80 会話及び言語の特異的発達障害
F81 学習能力の特異的発達障害
F82 運動機能の特異的発達障害
F83 混合性特異的発達障害
F84 広汎性発達障害
F88 その他の心理的発達障害
F89 詳細不明の心理的発達障害

F9 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害

F90 多動性障害
F91 行為障害
F92 行為及び情緒の混合性障害
F93 小児<児童>期に特異的に発症する情緒障害
F94 小児<児童>期及び青年期に特異的に発症する社会的機能の障害
F95 チック障害
F98 小児<児童>期及び青年期に通常発症するその他の行動及び情緒の障害

F群はざっくりと以下のように簡略化して記憶しましょう。

F0:認知症
F1:精神作用物質による障害(アルコールや薬物)
F2:統合失調症
F3:気分障害(躁うつ病など)
F4:神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害
F5:生理的障害(摂食障害など)
F6:人格障害、性同一性障害
F7:知的障害
F8:発達障害
F9:多動性障害、チック障害

F群をみてみると、認知症(F0)や知的障害(F7)は脳の器質的障害、精神作用物質による障害(F1)はアルコールや薬物などの精神作用物質が原因、統合失調症(F2)は陽性症状や陰性症状、気分障害(F3)は感情の変動など、はっきりした原因や特定の症状で定義されるうる疾患が並んでいますが、「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F4)」については、器質的障害でもなく共通するような症状もない、非常に捉えにくい疾患です。

詳しく見ていきましょう。

F4群

「神経症性障害,ストレス関連障害および身体表現性障害(F4)」は、強いストレスやショックなど精神的に強い負荷がかかったことによる精神障害の総称です。

強いストレスを伴う出来事に直面した恐怖や絶望感が原因で、防衛機制が働いて様々な症状が出ます。
以下で見ていきましょう。

F40 恐怖症性不安障害

危険がない対象や状況に対して恐怖や不安を感じる障害、対人恐怖や広場恐怖などです。

F41 その他の不安障害

パニック障害、全般性不安障害、混合性不安抑うつ障害などです。

F42 強迫性障害<強迫神経症>

強迫思考や強迫行為が特徴です。

F43 重度ストレスへの反応及び適応障害

診断基準としては「明瞭に同定できるストレス因の発生と神経症症状の発現の間に時間的関連があり、この心因的な衝撃がなければ症状の発現はなかったと判断できる」となっています。

急性ストレス障害、外傷後ストレス障害、適応障害など。

F44 解離性[転換性]障害

従来、「ヒステリー」と呼ばれていた障害で、解離性健忘、多重人格、離人症性障害、解離性昏迷、トランス、憑依障害、ガンザー症候群などが該当します。

ガンザー症候群は、刑務所や閉鎖病棟など自由を抑圧された環境下に置かれた人に見られる精神症状(拘禁反応)で、曖昧で的外れな答えが特徴のヒステリー精神状態です。

憑依(ひょうい)障害は、霊・神など他者に取り付かれていると確信する症状です。

F45 身体表現性障害

検査をしても異常所見が見られなくても身体的な症状を訴える障害です。

F48 その他の神経症性障害

神経衰弱や離人症などです。
離人症は、周囲の出来事や人々、自分に対して現実感がなくなり、夢の中にいるような奇妙な感じに襲われる症状です。

過去問

第22回 問題2

次のうち、ICD-10において、解離性(転換性)障害に含まれているものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 .トランスおよび憑依(ひょうい)障害
2 .強迫性障害
3 .パニック障害
4 .身体化障害
5 .離人・現実感喪失症候群

解離性障害は「神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害(F4)」に分類されます。
その解離性障害は、いわゆる「ヒステリー」のことで、トランスや憑依障害、ガンザー症候群などもそうでしたね。
ということで正解は選択肢1です。

第19回 問題3

次のうち、ICD-10に基づく「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(F4)」に含まれる疾患として、正しいものを1つ選びなさい。
1 チック障害
2 適応障害
3 双極性感情障害
4 統合失調症
5 血管性認知症

1 チック障害
間違いです。チック障害は「小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F9)」の「F95」に分類されます。

2 適応障害
これが正解です。適応障害は「神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(F4)」の「重度ストレスへの反応及び適応障害(F43)」に分類されます。

3 双極性感情障害
間違いです。双極性感情障害は「気分[感情]障害(F3)」の「F31」に分類されます。

4 統合失調症
間違いです。統合失調症は「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害(F2)」の「F20」に分類されます。

5 血管性認知症
間違いです。血管性認知症は「症状性を含む器質性精神障害(F0)」の「F01」に分類されます。

第16回 問題4

次のうち、ICD-10(国際疾病分類第10版)で「F4.神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」に分類されるものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 一過性全健忘
2 気分変調症
3 ガンザー症候群
4 レット症候群
5 トゥレット症候群

1 一過性全健忘
間違いです。一過性全健忘はG群「神経系の疾患」に分類されています。

2 気分変調症
間違いです。気分変調症は「気分障害(F3)」の「持続性気分[感情]障害(F34)」に分類されます。

3 ガンザー症候群
これが正解です。「解離性障害(F44)」に分類されています。

4 レット症候群
間違いです。レット症候群は、乳幼児早期に発症し発達障害をもたらす難病です。獲得していた手足の運動や言葉が失われていく一方で、筋緊張の異常や姿勢ジストニア、知的障害、てんかんなどが年齢とともに現れてきます。「心理的発達の障害(F8)」の「広汎性発達障害(F84)」に分類されています。

5 トゥレット症候群
トゥレット症候群は、突発的、不随意的に急速な動きや発声を繰り返す音声チックと運動チックが長期間続くチック障害です。
「小児期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害(F9)」の「チック障害(F95)」に分類されています。

第18回 問題3

ICD−10における精神および行動の障害に関する次の組合せのうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 症状性を含む器質性精神障害 —– 広汎性発達障害
2 統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害 —– 急性一過性精神病性障害
3 気分(感情)障害 —– 統合失調感情障害
4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害 —– 摂食障害
5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群 —– 性同一性障害

1 症状性を含む器質性精神障害 —– 広汎性発達障害
間違いです。広汎性発達障害は「心理的発達の障害(F8)」に分類されます。

2 統合失調症、統合失調型障害および妄想性障害 —– 急性一過性精神病性障害
これが正解です。

3 気分(感情)障害 —– 統合失調感情障害
間違いです。統合失調感情障害は「統合失調症、統合失調症型障害および妄想性障害(F2)」に分類されます。

4 神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害 —– 摂食障害
間違いです。摂食障害は「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群(F5)」に分類されます。

5 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群 —– 性同一性障害
間違いです。性同一性障害は「成人の人格および行動の障害(F6)」に分類されます。

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