ICD-10(国際疾病分類)の分類
ICD-10(国際疾病分類)によると「精神および行動の障害」はF群に分類され、統合失調症はその中のF2群に分類されます。
F1 精神作用物質使用による精神及び行動の障害:アルコールや薬物による障害
F2 統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害:統合失調症など
F3 気分[感情]障害:躁うつ病など
F4 神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害:不安障害、強迫性障害、解離性障害
F5 生理的障害及び身体的要因に関連した行動症候群:摂食障害、非器質性睡眠障害、性機能不全など
F6 成人の人格及び行動の障害:人格障害、性同一性障害、性嗜好の障害など
F7 知的障害〈精神遅滞〉:知的障害など
F8 心理的発達の障害:発達障害など
F9 小児<児童>期及び青年期に通常発症する行動及び情緒の障害:多動性障害、行為障害、チック障害など
原因
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス 総合サイト」によると、統合失調症の原因はよくわかっていないとのことです。
脳内で情報を伝える神経伝達物質のバランスが崩れることが関係しているとか、大きなストレスが関係しているとか、遺伝子も関与しているとか、いろいろ言われていますが、統合失調症になりやすい要因をいくつか持っている人が、仕事や人間関係のストレスによって発症するのではないかと考えられています。
症状
統合失調症の症状は「陽性症状」と「陰性症状」に分けることができます。
陽性症状は健康なときにはなかった状態が表れるもの、陰性症状は健康なときにあったものが失われるものです。
陰性症状:意欲の低下、感情鈍麻等
ICD-10では以下の4項目が診断基準になっています。
・ 操られる、影響される、抵抗できないという妄想。妄想知覚(知覚した日常の現象から、直ちに妄想的な意味を感じる(例:白衣についた小さな血痕を見て、「自分は死ぬ運命だ」と確信するなど)
・自分の行動に絶えずコメントしたり(例:食べようとすると「食べるな」と聴こえてくる)、仲間たちが自分を話題にしたりする幻聴。身体のある部分から発せられる幻聴(例:お腹から聴こえてくる)
・文化的に不適切で全くありえない内容の持続的な妄想(例:自分は万能の神であり世界平和のため永遠の命を持っているなど)
以上のうち1つが1ヶ月以上続いていること、ただし他の脳の疾患や薬物に関連した精神障害ではないことを確認し診断します。
治療
統合失調症の治療には、薬物療法と非薬物療法があり、両者を組み合わせて行うことが一般的です。
薬物療法としては抗精神病薬で中心となる症状を抑え、補助的に抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬などが組み合わせられます。
薬によって完治することはないので、専門医の判断で量を調整したりしながら、気長に治療を続けます。
症状が安定していても、自己判断で薬を止めたりすることはNGです。
非薬物療法としては心理社会的な治療(専門家と話をしたりリハビリテーションを行う治療)があります。
心理社会的な治療には、心理教育や生活技能訓練(SST)、作業療法があります。
生活技能訓練(SST):ロールプレイ等を通じて、社会生活や対人関係のスキルを回復する訓練を行う
作業療法:園芸、料理、木工などの軽作業を通じて、生活機能の回復を目指す
重篤な統合失調症の治療には、「修正型電気けいれん療法」があります。薬物療法ができない妊婦さんにも使えます。
過去問
第17回 問題3
統合失調症に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 幻覚をしばしば認める。
2 見当識障害がある。
3 意識障害がある。
4 血液検査で診断できる。
5 ICD-10によれば、F3群に分類される。
1 幻覚をしばしば認める。
正しいです。幻覚は陽性症状として見られます。
2 見当識障害がある。
間違いです。見当識障害は認知症や高次脳機能障害などでよく見られる症状で、自らの置かれている環境を理解する能力(見当識)の障害です。
3 意識障害がある。
間違いです。
4 血液検査で診断できる。
間違いです。
5 ICD-10によれば、F3群に分類される。
間違いです。ICD-10ではF2群に分類されています。
F3群は感情障害です。
第25回 問題3
次のうち、統合失調症の陰性症状として、正しいものを1つ選びなさい。
1 言葉のサラダ
2 貧困妄想
3 感情鈍麻
4 作為体験
5 思考抑制
選択肢3が正解です。
第21回 問題9
次のうち、統合失調症の非薬物的治療法として、最も用いられているものを1つ選びなさい。
1 理学療法
2 作業療法
3 内観療法
4 曝露療法
5 精神分析療法
選択肢2が正解です。
第17回 問題7
統合失調症に対する抗精神病薬による治療に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 幻覚・妄想より認知機能障害に有効である。
2 高齢者に対しては、若年者より投与量を増やす。
3 症状寛解後も長期にわたる服薬を要する。
4 薬剤選択に当たっては、糖尿病の合併を考慮する。
5 多剤併用を基本とする。
1 幻覚・妄想より認知機能障害に有効である。
間違いです。
2 高齢者に対しては、若年者より投与量を増やす。
間違いです。
3 症状寛解後も長期にわたる服薬を要する。
正しいです。
4 薬剤選択に当たっては、糖尿病の合併を考慮する。
正しいです。非定型抗精神病薬は、高血糖を生じさせることがあり、特にオランザピンとクエチアピンは糖尿病患者への投与は禁忌です。
5 多剤併用を基本とする。
間違いです。副作用等を考えると多剤併用はいけません。
次の記事
次は、うつ病について。
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