障害者の就労支援については「障害者の就労支援」を参照してください。
ここでは精神障害者に焦点を当てて、その就労の実態を見ていきます。
平成30年度 障害者雇用促進法改正
身体障害者や知的障害者に比べて、精神障害者の就労状況について特記すべき事項として、雇用者数が少ないことと雇用定着率が低いことが挙げられます。
このような状況を踏まえ、平成30年度には障害者雇用促進法が改正され、以下の2点が変更されました。
・精神障害者の雇用義務化
障害者雇用促進法では、一般企業や官公庁に対して障害者の雇用義務が課せられています。
雇用する従業員に対して一定割合(法定雇用率)で障害者を雇うことが義務づけられています。
平成30年4月にその法定雇用率が引き上げられ、さらにそれまで身体障害者と知的障害者のみだった対象に精神障害者が加えられました。
この場合の障害者として算定できるのは、障害者手帳を持っている人です。
障害者雇用実態調査結果
厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」によると、
・精神障害者の雇用者数は5年前から大幅に増加 48,000人(平成25年)→200,000人(平成30年)
・平均勤続年数は、身体障害者10年2月、知的障害者7年5月、精神障害者3年2月、発達障害者3年4月
下のグラフを見ると、3障害の中で精神障害者は最も雇用者数が少ないですが、ここ数年の間に大きく増加してきています。
平成30年から精神障害者が雇用義務の対象になったことが影響していると思われます。
雇用形態をみると、身体障害者は52.5%、知的障害者は19.8%、精神障害者は25.5%、発達障害者は22.7%が正社員となっており、労働時間は以下の表のとおり精神障害者が突出して短くなっています。
労働時間 | 身体障害者 | 知的障害者 | 精神障害者 | 発達障害者 |
---|---|---|---|---|
週30時間以上 | 79.8% | 65.5% | 47.2% | 59.8% |
週20時間以上30時間未満 | 16.4% | 31.4% | 39.7% | 35.1% |
週20時間未満 | 3.4% | 3.0% | 13.0% | 5.1% |
週30時間以上働いている精神障害者は半分にも満たず、週20時間未満で働いている精神障害者は1割を超えています。
雇用している障害者への事業主の配慮事項として、知的障害者、精神障害者及び発達障害者において、「短時間勤務等勤務時間の配慮」が最も多くなっています。
特に精神障害者においては7割以上が勤務時間への配慮が必要です。
このような配慮がない場合に退職してしまうなど精神障害者の職場定着の難しさが伺えますね。
平均勤続年数が、身体、知的障害者に比べて精神障害者は3年強という短期間であることに表れています。
障害者の職業紹介状況等
厚生労働省「令和2年度障害者の職業紹介状況等」によると、障害者の就職件数について、身体障害者は約2万件、知的障害者は約2万件、精神障害者は約4万件となっていて、就職件数全体のうち精神障害者が約半分を占めています。
まとめ
精神保健福祉士は、精神障害者が心身ともに回復することを支援するだけでなく、社会復帰のための職業的リハビリテーションや職場定着支援等も含めた包括的な支援を担います。
近年の精神障害者の雇用状況としては、雇用者数は増加傾向にありますが短時間労働者の割合が高いこと、そして身体障害者や知的障害者に比べて職場定着率が極端に低い点が挙げられます。
精神障害者の雇用においては、労働時間への配慮が重要であることがわかります。
過去問
第23回 問題158
次の記述のうち、厚生労働省が発表した障害者の雇用の状況等について、正しいものを1つ選びなさい。
1 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)のハローワークを通じた障害者の就職率は20%未満である。
2 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)の障害者雇用の就職件数において精神障害者の割合は30%未満である。
3 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業における実雇用率は企業の規模が大きいほど高い。
4 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている精神障害者の数は、ここ5年間で横ばいである。
5 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている障害者の数では、精神障害者が知的障害者よりも多い。
1 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)のハローワークを通じた障害者の就職率は20%未満である。
間違いです。50%近いです。
2 「平成30年度障害者の職業紹介状況等」によれば、2018年度(平成30年度)の障害者雇用の就職件数において精神障害者の割合は30%未満である。
間違いです。50%近いです。
3 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業における実雇用率は企業の規模が大きいほど高い。
これが正解です。
4 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている精神障害者の数は、ここ5年間で横ばいである。
間違いです。2018年から精神障害者が雇用義務化されたこともあり、民間企業において雇用されている精神障害者の数は増加しています。
5 「令和元年障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業において雇用されている障害者の数では、精神障害者が知的障害者よりも多い。
間違いです。精神障害者より知的障害者の方が多いです。
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次は、医療リワークについて。
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