0年に採択された「ソーシャルワークの定義」は、2014年にグローバルに生まれ変わりました。
何が変わったのか、グローバル定義の中核となる4つの原理とは?

ソーシャルワーク専門職のグローバル定義の歴史
1956年 国際ソーシャルワーカー連盟IFSW
国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW:International Federation of Social Workers)は、1956年に設立された国際的なソーシャルワーカーの団体です。IFSWには世界128カ国の加盟団体が参加し、述べ300万人以上のソーシャルワーカーを代表する組織になっています。
IFSWへの加盟資格が1国1組織であるため、日本は以下の4団体で国内調整団体としての日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW:Japanese Federation of Social Workers)を組織し、JFSWとして国際ソーシャルワーカー連盟に加盟しています。
・公益社団法人 日本社会福祉士会
・公益社団法人 日本精神保健福祉士会
・公益社団法人 日本医療社会福祉協会

2000年「ソーシャルワークの定義」採択
2000年に、モントリオールの国際ソーシャルワーカー連盟総会で「ソーシャルワークの定義」が採択されました。
以下の内容です。
ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め人間関係における問題解決を図り、人びとのエンパワメントと解放を促していく。ソーシャルワークは、人間の行動と社会のシステムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。
2014年「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」採択
「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」は、2014年7月にメルボルンでの国際ソーシャルワーカー連盟総会および国際ソーシャルワーク学校連盟総会において採択されました。
この定義では中核概念を説明し、ソーシャルワーク専門職の中核となる任務・原則・知・実践について詳述するものであるという注釈がつけられています。
2015年には社会福祉専門職団体協議会と日本社会福祉教育学校連盟が協働で日本語に訳しました。
2015年「ソーシャルワークのグローバル定義」日本語訳
2014年に採択されたソーシャルワークのグローバル定義の日本語訳の一部を以下に掲載します。
ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエンパワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学、および地域・民族固有の知を基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう、人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。
上の内容をまとめると、
ソーシャルワークの中核となる4任務
・社会開発
・社会的結束
・人々のエンパワメントと解放
.png)
エンパワメントは、社会的に不利な状況に置かれた人が、自己決定能力を高め主体的に行動できるようになること、
ソーシャルワークの中核となる4原理
・人権
・集団的責任
・多様性尊重
さらに、2000年に採択された「ソーシャルワークの定義」から、2014年に採択された「ソーシャルワークのグローバル定義」になって、「各国および世界の各地域で展開してもよい」と付け加えられたことを覚えておきましょう。

つまり、文字通りグローバルになったんだ。
以上を踏まえて過去問を見ていきます。
過去問
第25回 問題24
- 「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークに関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1 実践に基づいた専門職であり学問である。
2 原理の一つに社会正義がある。
3 集団的権利ではなく個人の権利を尊重する。
4 西洋の諸理論を基準に展開される。
5 「人々とともに」ではなく「人々のために」働くという考え方をとる。
(注)「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
1 実践に基づいた専門職であり学問である。
正しいです。
2 原理の一つに社会正義がある。
正しいです。社会正義、人権、集団的責任、多様性尊重の4つの原理があります。
3 集団的権利ではなく個人の権利を尊重する。
誤りです。個人の権利と集団的権利の両方を含みます。
4 西洋の諸理論を基準に展開される。
誤りです。西洋の諸理論だけでなく、先住民を含めた地域・民族固有の知にも拠っています。
5 「人々とともに」ではなく「人々のために」働くという考え方をとる。
誤りです。「人々のため」にではなく「人々とともに」という考え方をとります。
第25回 問題37
- 次の記述のうち、エンパワメントに関する説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 障害者が差別されず、社会の中に組み入れられていくこと。
2 専門家による最小限の介入で、自分の選んだ環境で落ち着き、満足できるようにすること。
3 逆境や困難を克服することで強化される、人間に本来備わっている復元力のこと。- 4 人々がお互いに責任を果たすことで、個人の権利が日常レベルで実現されること。
- 5 社会的に不利な状況に置かれた人が、自己決定能力を高め主体的に行動できるようになること。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義に規定されている、ソーシャルワークの中核となる任務にある「人々のエンパワメントと解放の促進」、そのエンパワメントの意味は、選択肢5が適切です。
社会福祉士 第29回 問題92
「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワークの中核をなす原理として、正しいものを1つ選びなさい。
1 個人的正義
2 集団主義
3 自民族中心主義
4 自己責任
5 多様性尊重
(注)「ソーシャルワークのグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
「社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャルワークの中核をなす」とありますので、選択肢5が正解です。
社会福祉士 第30回 問題92
「ソーシャルワークのグローバル定義」(2014年)におけるソーシャルワーク専門職の中核となる任務として、正しいものを1つ選びなさい。
1 人々のエバリュエーション
2 技術開発の促進
3 自民族中心主義の促進
4 自己変革の促進
5 人々のエンパワメントと解放
(注)「ソーシャルワークのグローバル定義」とは、2014年7月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
1 人々のエバリュエーション
エバリュエーションは評価の意味なのでおかしいです。
2 技術開発の促進
技術開発の促進ではなく「社会開発の促進」ですので間違いです。
3 自民族中心主義の促進
自民族中心主義はありえません。
4 自己変革の促進
自己変革の促進ではなく「社会変革の促進」です。
5 人々のエンパワメントと解放
これが正解です。
社会福祉士 第33回 問題92
次のうち、「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」(2014 年)が「ソーシャルワークの定義」(2000 年)と比べて変化した内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 人間関係における問題解決を図ることが加えられた。
2 中核をなす原理として、社会の不変性の尊重が容認された。
3 実践の基盤として、社会システムに関する理論の導入が加えられた。
4 定義は、各国及び世界の各地域で展開することが容認された。
5 人々が環境と相互に影響し合う接点に介入することが加えられた。
(注)1 「ソーシャルワーク専門職のグローバル定義」とは、2014 年 7 月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)と国際ソーシャルワーク学校連盟(IASSW)の総会・合同会議で採択されたものを指す。
2 「ソーシャルワークの定義」とは、2000 年 7 月の国際ソーシャルワーカー連盟(IFSW)で採択されたものを指す。
選択肢4が正解です。「各国及び世界の各地域で展開してもよい」という文言が加わりました。
次の記事
次は、倫理綱領について。
コメント