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【災害時の心理的支援】サイコロジカルファーストエイド&デブリーフィング

災害時の心理的支援【新カリ】現代の精神保健の課題と支援
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自然災害や大事故に遭遇した人たちに対しては、物質的な支援だけでなく心理的支援も重要です。

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災害時の心理的変化

茫然自失期

災害発生後数時間~数日間は、恐怖体験のため無感覚、感情の欠如、茫然自失の状態になります。

ハネムーン期

茫然自失期から災害発生数日後~数週間、数カ月間は、ハネムーン期に入ります。この期間に入ると、被災者は災害後の生活に適応したように見えます。被害の回復に向かって積極的に活動し、被災者同士の連帯感で結ばれます。

幻滅期

災害発生後数週間後~マスコミが被災地を報じなくなり被災者以外の人が関心を持たなくなります。それにより被災者は無力感や倦怠感に襲われるようになります。

災害後の心理的変化

Zunih & Myer,2000より

被災の影響

心的外傷後ストレス障害(PTSD)&急性ストレス障害

PTSDについて、詳しくはこちらの記事で。

二次受傷

二次受傷とは、災害、事故、犯罪などの悲惨な体験を負った人の話を聞いたり現場を目撃することで、被害者と同様のPTSD症状を発症することをいいます。

災害時の心理的支援

(心理的)デブリーフィング

デブリーフィングは、災害や精神的ショックを経験した人々に対して行われる、急性期(災害直後の数日~数週間)の介入のことです。

デブリーフィングは1990年代まではPTSDの発症を予防する手法として用いられたこともあったのですが、効果が実証されず、現在では緊急時支援としてのデブリーフィングは行われません。

カリスマくん
カリスマくん

ブリーフは「簡潔な、簡単な」、ブリーフィングは「簡単な打ち合わせ」などの意味でビジネスでは使われるね。そこから派生してデブリーフィングは「急性期の応急処置」のような意味だね。

それに代わってできるだけ安全な支援方法として「サイコロジカル・ファーストエイド」がWHOなどによって開発されました。

サイコロジカル・ファーストエイド

サイコロジカル・ファーストエイドは、災害や事故、テロ等の直後に実施される心理的支援や社会的支援のことです。

サイコロジカルという言葉が使われていますが、心理的支援だけでなく社会的支援などの包括的な支援が実施されます。

詳細は、以下の「サイコロジカル・ファーストエイド」実施の手引きをご参照ください。

<サイコロジカル・ファーストエイド8つの活動>
①被災者に近づき活動を始める
②安全と安心感
③安定化
④情報を集める
⑤現実的な問題の解決を助ける
⑥周囲の人々との関わりを促進する
⑦対処に役立つ情報
⑧紹介と引継ぎ
カリスマくん
カリスマくん

サイコロジカル(心理的)とあるけど、食料や衣類などの物質的支援も含まれるよ。

トリアージ

トリアージとは、重傷度や緊急度に応じた「傷病者の振り分け」のことです。

大災害では現場でトリアージされ「緊急」とされた被災者が病院へ搬送され、 PFA提供者はそこで医療的介入、心理的介入、行動上の介入、投薬など、必要に応じて振り分けます。

災害派遣チーム

DWAT(Disaster Welfare Assistance Team):災害派遣福祉チーム
DCAT(Disaster Care Assistance Team):災害派遣介護チーム
DMAT(Disaster Medical Assistance Team):災害派遣医療チーム
DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team):災害派遣精神医療チーム
カリスマくん
カリスマくん

ディーワット、ディーキャット、ディーマット、ディーパットと読んでね。
DWATとDCATは福祉チーム、DMATとDPATは医療チームだね。
DMATはよく知られてるけど、その福祉版としてできたのがDWATだよ。

DWAT、DCAT

災害派遣福祉チームDWAT(Disaster Welfare Assistance Team)は、災害時に被災地域に入り、一般避難所や福祉避難所で要配慮者等に対し福祉支援を行う専門職チームです。

派遣されたチームは、避難者等の福祉ニーズの把握やスクリーニング、福祉避難所への誘導、日常生活上の支援、各種相談対応、環境整備などを実施します。

災害派遣介護チームDCAT(Disaster Care Assistance Team)は、DWATとほぼ同じ意味で、都道府県ごとに呼び方が違うだけです。

「災害時の福祉支援体制の整備に向けたガイドライン」によると以下のように規定されています。

各都道府県は、一般避難所で災害時要配慮者に対する福祉支援を行う災害派遣福祉チームを組成するとともに、一般避難所へこれを派遣すること等により、必要な支援体制を確保することを目的として、都道府県、社会福祉協議会や社会福祉施設等関係団体などの官民協働による「災害福祉支援ネットワーク」を構築するものとする。
なお、ネットワークは、都道府県を中心に、政令指定都市、中核市を含め、管内市区町村の協力を得て、可能な限り一元的な都道府県内のネットワークの構築を図るものとする。

カリスマくん
カリスマくん

熊本の震災の時は、他府県からのDWATが集まったね。

DMAT

災害派遣医療チームDMAT(Disaster Medical Assistance Team)は、「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており、医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成されます。

DMATに登録している医療従事者は、DMATの研修を受けて資格を保有しており、普段は「DMAT指定医療機関」で医師や看護師として働いています。大規模な災害時や該当している自治体での災害や事故の際にDMATとして招集され、現場での活動をします。

厚生労働省の「日本DMAT」と、都道府県ごとに発足している「都道府県DMAT」があります。

DPAT

災害派遣精神医療チームDPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)は、災害時に被災地域に入り、精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチームで、都道府県や政令指定都市によって組織される専門的な研修を受けたチームです。

カリスマくん
カリスマくん

DMATは医療全般、DPATは精神医療に特化したチームだよ。

DPATは、自然災害や事故、犯罪など後、被災地域に入り精神科医療および精神保健活動の支援を行う専門的なチームです。

厚生労働省HPにはDPATの定義が以下のように書かれています。

DPATは、各都道府県等が継続して派遣する災害派遣精神医療チーム全ての班を指す。
各班は、被災地の交通事情やライフラインの障害等、あらゆる状況を想定し、交通・通信手段、宿泊、日常生活面等で自立している必要がある。

ということで、DPATは都道府県や政令指定都市が組織することを覚えておきましょう。

過去問

第22回 問題17 

災害時の精神保健に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 災害発生後 48時間以内に被災者が呈する精神症状を心的外傷後ストレス障害 (PTSD)という。
2 厚生労働省によって組織される専門的な研修・訓練を受けたチームを災害派遣精神医療チーム(DPAT)いう。
3 重度の精神障害者のために考案された介入法をサイコロジカル・ファーストエイド(PFA)という。
4 被災者の治療優先順位を決める手法をデブリーフィングという。
5 被災者へのケア活動によって、被災を直接経験していない支援者に生じる外傷性ストレス反応のことを二次受傷という。

1 災害発生後 48時間以内に被災者が呈する精神症状を心的外傷後ストレス障害 (PTSD)という。
間違いです。PTSDは48時間以内ではありません。

2 厚生労働省によって組織される専門的な研修・訓練を受けたチームを災害派遣精神医療チーム(DPAT)という。
間違いです。DPATは、厚生労働省ではなく都道府県及び政令指定都市によって組織されるチームです。

3 重度の精神障害者のために考案された介入法をサイコロジカル・ファーストエイド(PFA)という。
間違いです。サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)とは、心理的応急処置という意味です。重度の精神障害者のためではなく、深刻な危機的出来事に見舞われた人に対しての支援です。

4 被災者の治療優先順位を決める手法をデブリーフィングという。
間違いです。デブリーフィングとは、災害直後から数週間後に行われる急性期介入のことをいいます。

5 被災者へのケア活動によって、被災を直接経験していない支援者に生じる外傷性ストレス反応のことを二次受傷という。
これが正解です。

第19回 問題15

災害時の精神保健活動に関する用語とその説明に関する次の組合せのうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 災害派遣精神医療チーム(DPAT) —– 都道府県や政令指定都市によって組織される専門的な研修・訓練を受けたチーム
2 サイコロジカル・ファーストエイド(PFA) —– 精神科医による専門的精神療法
3 災害医療におけるトリアージ —– 緊急事態ストレスを経験した人への心理的介入法
4 災害時こころの情報支援センター —– 都道府県が設置する情報センター
5 デブリーフィング(debriefing) —– 不安や恐怖に対する薬物療法

1 災害派遣精神医療チーム(DPAT) —– 都道府県や政令指定都市によって組織される専門的な研修・訓練を受けたチーム
これが正解です。

2 サイコロジカル・ファーストエイド(PFA) —– 精神科医による専門的精神療法
間違いです。サイコロジカルファーストエイドは、災害早期の心理的支援です。

3 災害医療におけるトリアージ —– 緊急事態ストレスを経験した人への心理的介入法
間違いです。トリアージとは、治療などの優先順位を決めることです。

4 災害時こころの情報支援センター —– 都道府県が設置する情報センター
間違いです。災害時こころの情報支援センターは、厚生労働省の委託事業として、国立精神・神経医療研究センターに設置されています。そして、全国の被災県のこころのケアセンターの設置や、全国の総合的な調整指導やデータ分析を行っています。

5 デブリーフィング(debriefing) —– 不安や恐怖に対する薬物療法
間違いです。デブリーフィングは、急性期の災害・精神的ショックに対する援助の方法で、薬物療法ではなくグループで詳しく話すことでつらさを克服する手法です。
最近ではPTSDの症状をむしろ悪化させる例もあるので注意が必要とされています。

第24回 問題17

次のうち、被災者の心理的変化に関して、徐々に疲労が蓄積していくとともに、被災者同士の間で強い連帯感が生まれる時期として、適切なものを1つ選びなさい。
1 茫然自失期
2 再建期
3 幻滅期
4 無感覚期
5 ハネムーン期

選択肢5が正解です。

第25回 問題16

N県で大規模災害が発生したことから、P県に勤務するC精神保健福祉士に対し、その担当部者より被災地支援チームの一員として参加するよう要請がなされた。当該支援チームの主な活動内容は、急性期の精神科医療ニーズへの対応、精神保健医療ニーズの把握、他の保健医療体制の連携、専門性の高度精神科医潦の提供と精神保健活動の支援である。C精神保健福祉士は国が認めた専門的な研修・訓練も受け、 同チームの構成メンバーとして登録されている 。

次のうち、このチームの名称として、正しいものを1つ選びなさい。
1 DHEAT
2 DMAT
3 DPAT
4 DWAT
5 JMAT

選択肢3が正解です。DPATは精神医療チームです。

第26回 問題15

災害時の精神保健に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1  デブリーフィングは、災害時に備えた福祉施設での避難訓練である。
2  急性ストレス障害(ASD)は、災害発生後1か月以上が経過してから初めて被災者に現れる精神症状である。
3  DPATは、厚生労働省に設置する災害時の情報センターである。
4  サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)は、重大な危機的出来事にあったばかりで苦しんでいる人びとへの人道的、支持的、かつ実際的な支援である。
5  トリアージは、災害時の精神科医による精神療法である。

1  デブリーフィングは、災害時に備えた福祉施設での避難訓練である。
誤りです。デブリーフィングは避難訓練ではなく、災害急性期の心理的支援の方法です。

2  急性ストレス障害(ASD)は、災害発生後1か月以上が経過してから初めて被災者に現れる精神症状である。
誤りです。ASDは1か月以内、PTSDは1か月以上です。

3  DPATは、厚生労働省に設置する災害時の情報センターである。
誤りです。DPATは情報センターではなく、災害派遣精神医療チームです。

4  サイコロジカル・ファーストエイド(PFA)は、重大な危機的出来事にあったばかりで苦しんでいる人びとへの人道的、支持的、かつ実際的な支援である。
正しいです。

5  トリアージは、災害時の精神科医による精神療法である。
誤りです。トリアージは、災害時などに治療者の優先順位を決める方法です。

公認心理師 第1回 問1

サイコロジカル・ファーストエイドを活用できる場面として、最も適切なものを1つ選べ。
①インテーク面接
②予定手術前の面接
③心理検査の実施場面
④事故現場での被害者の救援
⑤スクールカウンセリングの定期面接

選択肢④が正解です。

公認心理師 第1回 問124

巨大な自然災害の直後におけるサイコロジカル・ファーストエイドについて、適切なものを2つ選べ。
①被災者の周囲の環境を整備し、心身の安全を確保する。
②被災者は全て心的外傷を受けていると考えて対応する。
③被災体験を詳しく聞き出し、被災者の感情表出を促す。
④食料、水、情報など生きていく上での基本的ニーズを満たす手助けをする。
⑤被災者のニーズに直接応じるのではなく、彼らが回復する方法を自ら見つけられるように支援する。

①被災者の周囲の環境を整備し、心身の安全を確保する。
正しいです。

②被災者は全て心的外傷を受けていると考えて対応する。
間違いです。そんなことはありません。

③被災体験を詳しく聞き出し、被災者の感情表出を促す。
間違いです。
被災者の感情表出を促す(心理的デブリーフィング)はサイコロジカル・ファーストエイドとしては不適切です。

④食料、水、情報など生きていく上での基本的ニーズを満たす手助けをする。
正しいです。

⑤被災者のニーズに直接応じるのではなく、彼らが回復する方法を自ら見つけられるように支援する。
間違いです。サイコロジカル・ファーストエイドとしては不適切です。
被災者のニーズに直接応じます。

次の記事

ここからは、組織運営に関連した内容に入ります。

まずは、リスクマネジメントについて。

404 NOT FOUND | 精神保健福祉士国試 2カ月で合格できる覚え方
社会福祉士合格者に捧ぐ

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