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【社会調査】質的調査

質的調査 【新カリ】ソーシャルワークの理論と方法
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社会調査は量的調査と質的調査に分けられます。

量的調査は仮説を証明するために行いますが、質的調査は新しい発見をするために実施します。

ここでは質的調査について見ていきます。

質的調査で覚えなければならないのは以下の4点です。

・分析法
・観察法
・面接法
・コーディング

面接法や観察法でデータを収集し、分析法やコーディングでデータを整理分析します。

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分析法

質的調査の分析法として、KJ法とGTAの2つは重要です。

KJ法

KJ法は、ブレーンストーミングなどによって集められた多くの意見や情報に対して、グルーピングやラベリングを行い問題解決策を見出す技法です。

カリスマくん
カリスマくん

川喜田二郎さんが考案したのでKJ法と呼ばれてるよ。

皆さんも研修などでやったことがあると思いますが、付箋紙に思いつくまま課題などを挙げていってグループに分け、小さいグループから大きなグループへカテゴライズしていく、あれです。

①分かりやすい用語で付箋紙に記入

②付箋同士を小グループに分類(1枚残っても良い)

③小グループから大グループ化

④複数のユニットを模造紙上に再配置

KJ法

グラウンデッドセオリーアプローチ(GTA)

GTAは、グレイザーとストラウスがアメリカで開発しました。
新しい仮説を生み出すことを目的として、得られた質的データを抽象化、理論化するための方法です。

人々の語りや行動を1つひとつのデータに切片化し、切片化されたデータを意味のまとまり、カテゴリーごとに集め抽象化していきます。

このような概念と概念、カテゴリーとカテゴリー間の関係の比較分析を繰り返し、最終的にもうそれ以上概念やカテゴリーが出てこないという理論的飽和という状態に至ります。

理論的飽和までの流れは以下のようになります。

①データの収集
②オープンコーディング
③軸足コーディング
④選択的コーディング
⑤理論の完成
⑥理論的飽和

コーディングについては下で詳しく取り上げています。

KJ法とグランデッドセオリーアプローチはどちらも1960年代後半に開発され、共通点は最初に仮説や分析軸をもたずに分析作業を通して新しい発見をすることです。

異なる点はKJ法は書き出したものは全て使う、GTAでは仲間外れは使わなくても良いということでしょうか。

KJ法では無理にカテゴリーに含めようとするのではなく、どこにも含まれないものはそのままにしておき、GTAのように仲間外れを除外してはいけません。

デルファイ法

デルファイ法は、考えたいテーマに対して多くの専門家にアンケート等を行い、さらにその結果を専門家たちに再検討させる手順を複数回繰り返すことで意見を収斂させていく方法です。

観察法

参与観察

参与観察は、調査対象者と一緒に参加したり生活したりして、調査対象者との相互作用が発生する観察法です。

文化人類学における異文化社会の研究などで用いられます。

カリスマくん
カリスマくん

山奥に住んでいる先住民族などと長期間一緒に生活して調査するんだ。

統制的観察

統制的観察は、観察ポイントをあらかじめ決めて観察する方法です。

面接法

3種類の面接法を覚えましょう。

・構造化面接
・非構造化面接
・半構造化面接

構造化面接

構造化面接は、事前に面接時の内容(質問の内容や順序など)をすべて決めておいて、その通りに面接を行う方法です。

非構造化面接

非構造化面接は、事前に面接の内容を決めず、臨機応変に面接を行う方法です。

半構造化面接

半構造化面接は、構造化面接と非構造化面接の中間で、事前にある程度質問内容を決めておいて面接時に臨機応変に質問を加えたり減らしたり、という面接技法です。

インタビュー

グループインタビュー

グループで聞き取りを行う方法です。

フォーカスグループインタビュー

フォーカスグループインタビューは、ある共通した属性をもつ人で小規模のグループを作り、グループ単位でインタビューを実施する調査手法です。司会者が最初にルールを説明し、インタビューしていきます。

マーケティングリサーチの代表的な手法のひとつです。

ライフストーリーインタビュー

ライフストーリーインタビューは、対象者の人生や過去の経験を聞き取って、対象者のアイデンティティや社会を理解するための調査方法です。

コーディング

質的調査では、調査結果を分析するためにコーディング(コードの割当て)することが必要です。

質的調査ではコーディングが非常に重要な作業で、質的データをラベリングして分析できるようにする行程です。

プリコーディング&アフターコーディング

量的調査ではアンケート等で選択肢を設定しますが、これがプリコーディングです。
つまり、「プリ=Pre(事前に、前もって)」という意味で、事前に選択肢という形でコーディングされているのが量的調査なのです。

カリスマくん
カリスマくん

プリペイドカードの「プリ」だね。事前にお金を支払うカードってこと。

オープンコーディング

グラウンデッドセオリーアプローチ では、①オープンコーディング、②軸足コーディング、③選択的コーディングと流れていきます。

オープンコーディングは、インタビュー記録やフィールドノートを読み込んで「思いつくまま」にコードを書き込んでいく方法です。

まずは「思いつくまま」にコーディングするのが特徴です。

カリスマくん
カリスマくん

つまり、オープンコーディングは初期の段階でのコーディングだね。

対して、質的調査の自由記述などの質問に対しては後からコーディングするしかありません。それがアフターコーディングです。

軸足コーディング

軸足コーディングは、研究がある程度進展した段階で、まとまったものを再コード化する手法です。

初期の段階で思いつくままにコーディングして(オープンコーディング)、その後、カテゴリー毎に軸足コーディングしていく、という流れです。オープンコーディングで抽出されたカテゴリーを相互に関連づけたりして、カテゴリーとサブカテゴリー間の関係を明らかにしていきます。

カリスマくん
カリスマくん

グラウンデッドセオリーアプローチの中でも、ストラウス派は軸足コーディングを使うけど、クレイザー派は軸足コーディングは用いないんだ。

選択的コーディング

軸足コーディングで少数にまとめられたカテゴリーから理論を導き出すのが選択的コーディングです。

インビボコーディング

インビボコーディングは、インタビュー等において対象者が使っている言葉をそのままコードとして用いる手法です。

「インビボ=生体内で」という意味で、逆は「インビトロ=試験管内で」

その他

エスノグラフィー

参与観察における質的調査のことをエスノグラフィーと呼びます。
元々は対象となる部族や民族の文化における特徴や日常的な行動様式を詳細に記述する方法のことで、参与観察によって民族を研究するところからはじまった民族の記録「民族誌」であり、民族の文化を描き出す方法でした。

それが現在では民族調査ではなく、「参与観察を用いた質的調査」という意味になっています。

カリスマくん
カリスマくん

エスニック料理は民族料理のことだから「エスノ=民族の」という意味だね。

つまり、ここでいう民族とは限定的な場所、特定のフィールドにおける文化や規範を共有する人々のことを指すわけです。

エスノメソドロジー

会話分析」などを用いて、人々が社会を作り上げる方法や社会秩序の成立を探求する手法です。

これまで、逸脱行動論逆機能など、社会秩序から逸脱した人々の行動について学んできましたが、そもそも逸脱行動は社会秩序が基準となっています。

そこで、平常時の秩序ある社会における人々の行動を中心に研究するものが、エスノメソドロジーです。

普通の人々の会話などを研究対象とするので、「会話分析」などが用いられるわけです。

アクションリサーチ

アクションリサーチは、アクション(実践)とリサーチ(研究)を一体的に行う、調査者が現場に関与する参与観察と同じような方法で、調査者と被調査者がともに取組む調査方法です。

参与観察と同じような手法ですが、調査者は問題の研究者であると同時に解決者でもあるという点がアクションリサーチの特徴です。つまり参与観察のように調査だけが目的ではなく、問題解決も同時に行います。

トライアンギュレーション

トライアンギュレーションは、質的調査の信頼性や妥当性を高めるために、複数の技法(インタビュー、量的方法、観察法等)を組み合わせて行う調査方法です。

様々な角度から現象を見る事によって真の姿に近づけるという立場に立つ手法で、データ収集のみでなく、拠って立つ理論やモデル、方法論、データの発信者などを変えて、多元的に調査を実施することを指します。

過去問

第24回 問題39(共通科目)

地域福祉の調査方法に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティカフェの利用者の満足度を数量的に把握するため、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて調査データを分析した。
2 地域における保育サービスの必要量を推計するため、幅広い住民に参加を呼び掛けて住民懇談会を行った。
3 福祉有償運送に対する高齢者のニーズを把握するため、無作為に住民を選んでフォーカスグループインタビューを実施した。
4 介護を行う未成年者のニーズを把握するため、構造化面接の方法を用いて当事者の自由な語りを引き出す調査を実施した。
5 認知症高齢者の家族介護者の不安を軽減する方法を明らかにするため、当事者と共にアクションリサーチを実施した。

1 コミュニティカフェの利用者の満足度を数量的に把握するため、グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて調査データを分析した。
誤りです。グラウンデッド・セオリー・アプローチは質的調査なので数量的な評価ができません。

2 地域における保育サービスの必要量を推計するため、幅広い住民に参加を呼び掛けて住民懇談会を行った。
誤りです。必要量の推計をするなら、アンケート調査などの量的調査が必要です。

3 福祉有償運送に対する高齢者のニーズを把握するため、無作為に住民を選んでフォーカスグループインタビューを実施した。
誤りです。無作為ではなく、高齢者を抽出してフォーカスグループインタビューを実施しなければなりません。

4 介護を行う未成年者のニーズを把握するため、構造化面接の方法を用いて当事者の自由な語りを引き出す調査を実施した。
誤りです。このようなニーズを把握するには、構造化面接ではなく半構造化面接や非構造化面接が適しています。

5 認知症高齢者の家族介護者の不安を軽減する方法を明らかにするため、当事者と共にアクションリサーチを実施した。
これが正解です。

第25回 問題69

精神科デイ・ケアの業務改善のために、H精神保健福祉士は大学の研究者と共に利用者に、「デイケアを利用して感じている効果や不満」についてフォーカスグループインタビューを複数回行った。その結果得られたテキストデータをH精神保健福祉士は、意味のある単位に区切ってラベルを付ける作業を行った。 次のうち、この作業を示す用語として、正しいものを1つ選びなさい。
1  トライアンギュレーション
2  クラスター分析
3  サンプリング
4  コーディング
5  エディティング

選択肢4が正解です。

次の記事

次は、社会調査の倫理について。

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