コンピテンス
その人の能力、適性、資産、言語能力などの社会で役立つ知識や技能を総称してコンピテンスといいます。
人の能力や収入のような「社会的能力」、「適格性」、「言語能力」といった言葉を総称して「コンピテンス」といい、いわば社会的基礎力のような意味合いです。
カルチュラル・コンピテンス
日本語では「多文化対応力」と訳され、それぞれの文化を尊重し、異なる文化の衝突や対立に対処する力のことです。
例えば、文化によっては豚肉を食べない、入れ墨を入れる、毎日お祈りをするとかいろいろありますね。
文化によって食べてよいものが違ったりすると、異なる文化で育った人が衝突したり対立したりすることもあり、戦争がその最たるものです。
そのような文化同士の対立に対処する力がカルチュラルコンピテンスであり、ソーシャルワークでは異なる文化を持った個人間の対立などに対処したりします。
過去問
次の事例を読んで、問題30 から問題32 までについて答えなさい。
〔事 例〕
来日した留学生Bさん(24歳、男性)は、日本語学校に入学し、生活習慣の違いに不安を抱えながらも新生活を始めた。
居住している留学生会館があるN地区は、外国籍の労働者や留学生が多く、国際結婚をした家族も多数居住している。
Bさんは、同じ日本語学校の留学生Cさんたちともすぐに仲良くなり、当初あった不安も減り孤独を感じることなく、慌ただしいながらも暮らしに馴染んでいった。(問題 30)
来日して3か月が過ぎた頃から、Bさんは気分が落ち込み、仲間たちとも次第に距離をとるようになっていった。
その様子を心配したCさんが、Bさんに付き添い日本語学校の保健室を訪れると、留学生支援で実績があるN地区のUクリニックを紹介された。
Uクリニックの医師は、Bさんに薬物療法の必要性を伝え、定期的な通院を勧めた。
インテークを担当したD精神保健福祉士は、言語や生活習慣の違いを特に注意しながら、Bさんと面接を行った。(問題 31)
Bさんは、D精神保健福祉士との面接を通じて、二人にサッカーという共通の趣味があることも分かり、徐々に打ち解けていった。
その後、Bさんは、自分の不調をうまく言葉に表すことができず苦しかったことや、日本での手続が複雑で困ったこと、日常生活で困惑したことなどを話すようになり、元気を取り戻していった。
ところがある日、BさんはD精神保健福祉士に、「留学生同士でも違う」、「みんな一緒にするな」と語気を荒げた。
そして、普段はあまり使わない母国語も交え、「この地区では同じ国の出身者と集まることが多い」、「留学生同士でも仲間に入れない人や、孤立している人がいる」と続け、これまで感じていた違和感や疎外感について訴え、肩を落とし、やがて沈黙し涙を浮かべた。(問題 32)
Bさんは通院を継続し、半年後には落ち着いて仲間たちとも付き合えるようになった。
最近の面接では、「趣味のサッカーをいかし、地域で交流を深められないか」と前向きな発言が聞けるようになってきている。
第21回 問題30
次のうち、このときBさんがCさんたちから受けていたソーシャルサポートとして、最も適切なものを 1 つ選びなさい。
1 所属的サポート
2 情緒的サポート
3 情報的サポート
4 道具的サポート
5 評価的サポート
選択肢2が正解です。
第21回 問題31
次のうち、D精神保健福祉士がBさんとの面接に当たり、念頭に置く内容として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 コミュニティオーガニゼーション
2 エビデンス・ベースド・プラクティス
3 ソーシャルアクション
4 ソーシャルエクスクルージョン
5 カルチュラル・コンピテンス
選択肢5が正解です。
第21回 問題32
次の記述のうち、この場面におけるD精神保健福祉士の発言として、最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「留学生同士のまとまりをより深めてみましょう」
2 「他地域の様子を参考にしてみてはどうでしょう」
3 「私も疎外感を覚えたときがありましたよ」
4 「地域の人々と交流したいのですね」
5 「今、孤独を感じているのですね」
選択肢5が正解です。面接技法「感情の反映」です。
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次は、倫理綱領について。
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