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【社会保険】年金、医療、雇用、労災、介護

医療保険 【新カリ】精神保健福祉制度論
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社会保障制度と社会保険制度

日本の社会保障制度は4層構造になっていて、その一番上には社会保険制度があります。

社会保障制度

日本の社会保障制度の根幹である「社会保険制度」について見ていきましょう。
日本では5つの社会保険制度があります。

<社会保険制度>
・年金制度
・医療保険
・雇用保険
・労災保険
・介護保険

この中でも、年金と医療保険は1961年からの国民皆保険・皆年金制度として社会保険制度の中心であり続けています。精神保健福祉士専門科目には、この中でも年金制度障害年金医療保険の給付内容が出題されます。

年金

老齢年金

国民年金(基礎年金)

国民年金は全ての国民に加入義務がある「基礎年金」で、必ず以下の1~3号のどれかに該当します。基礎年金と言われるだけあって、年金制度の土台になっています。

第1号20~60歳で2号3号以外の人(自営業者、学生、無職等)
第2号70歳未満の厚生年金被保険者
第3号第2号被保険者の被扶養配偶者のうち20~60歳未満の者(年収130万円未満、妻でも夫でも可)
公的年金制度

第1号は20歳以上の学生も含みますので学生でも保険料の納付が必要です。

カリスマくん
カリスマくん

ただし学生納付特例という制度があるので納付を猶予してもらえるね。でも毎年申請が必要で、もし追納しないと将来貰える年金額が減ってしまうよ。
追納しなくても年金を受け取るのに必要な加入期間には算定されるけどね。

注意すべきはサラリーマンで厚生年金に加入している人も、国民年金の被保険者になっているということです。

第1号と第3号は20~60歳までの加入ですが、第2号はサラリーマンが厚生年金に加入しているときの同時加入なので、60歳以上でも第2号被保険者です。

第3号の保険料は第2号の保険料から拠出されます。

カリスマくん
カリスマくん

日本に住む外国人も国民年金に加入しなければならないよ。

厚生年金

厚生年金はサラリーマンなどの被用者が加入する年金制度です。

2015年以前は公務員等が加入する共済年金というものがありましたが、現在は被用者年金が統合されて、厚生年金に一元化されています。

遺族年金

遺族年金は本人が死亡したときに、その遺族が受け取れる年金です。

受け取れる家族の範囲は以下の通りです。

遺族基礎年金「子のある配偶者」または「子」(18歳未満、障害児は20歳未満)
遺族厚生年金配偶者、父母、孫など(ただし子のない妻が30歳未満なら5年で消滅)

このように遺族基礎年金を受け取れる家族はとても狭く、基本的に「子」と考えてください。
配偶者がいても「子」がいないと受け取れませんから。
それに対して遺族厚生年金は「子のない配偶者」や「祖父母」でも受け取れます。

カリスマくん
カリスマくん

遺族厚生年金は、30歳以上なら一生もらえるのに、30歳未満なら5年間しか受けられないんだ。しかも、これは妻のみで、夫が妻に先立たれた場合は、55歳未満だと受給できないんだ。専業主婦が一般的だったころの名残だね。この男女差の是正が進められる予定だよ。

障害年金

障害年金は一定の障害状態になったときに支給される年金です。

障害の程度によって、等級があります。

障害基礎年金1級、2級
障害厚生年金1級、2級、3級

障害基礎年金2級は老齢基礎年金の満額と同じ額です。
障害基礎年金1級は2級の1.25倍です。

老齢基礎年金満額=障害基礎年金2級(1級は1.25倍)

障害基礎年金受給者(と生活保護受給者)は国民年金保険料が法定免除されます。

障害基礎年金という制度は特別な制度で、何が特別かと言うと、普通は保険制度というのは保険に加入している期間中に損害等を被った場合に支給されるものですが、障害基礎年金に限っては例外になっています。

つまり年金制度に加入できるのは20歳以上ですが、例えば先天的に障害を持っている人もいるので、そのような人は20歳になれば障害基礎年金を受給することができます。

保険料を一切払ってないのに。

障害基礎年金はこのように未拠出で受けられる年金ですが、この場合所得制限が設けられており、本人に一定の収入がある場合は全額又は半額が支給停止されます。

障害厚生年金は厚生年金に加入中に負った障害でないと支給されません。

併給について

これら3種類の年金は重複して受け取ることができません。

例えば障害を負って障害年金を受給していた人が、65歳になって老齢年金を受給するようになると障害年金はなくなります(選択できます)。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は併給可ですが、老齢基礎年金と障害基礎年金は併給出来ないということです。

老齢基礎年金満額=障害基礎年金2級(1級は1.25倍)

を思い出してください。

障害基礎年金2級を受給していた人が老齢基礎年金をもらい始める時に、金額に差がでないようになっています。

まとめ

以下に老齢年金、遺族年金、障害年金を1つ図にまとめました。図を見れば、老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金は併給できないことがなんとなくわかるでしょう。

カリスマくん
カリスマくん

老齢基礎年金、遺族基礎年金、障害基礎年金(2級)は同じ額に揃えられていて、併給出来ない感を醸し出してるね。

老齢年金、障害年金、遺族年金

医療保険

日本の医療保険制度は、国民健康保険、被用者保険、後期高齢者医療制度の3種類に分けられます。

国民健康保険

国民健康保険は2018年度から財政運営の責任主体は都道府県になり、市町村とともに保険者になっています。なので保険者協議会も都道府県に設置されます。市町村は引き続き保険料の徴収などを担っています。

国民健康保険は市町村国保国民健康保険組合に分かれます。

市町村国保は一般の個人事業主が加入するものですが、国民健康保険組合は特定の業種(建設業、医師、芸術家など)が加入します。

国民健康保険組合はそれ自体が保険者です。

カリスマくん
カリスマくん

日本に住む外国人も国民健康保険に加入しなければならないよ。

被用者保険

被用者保険といえばサラリーマンなどが加入する健康保険ですが、2種類あります。

中小企業等では協会けんぽ、大企業等では組合健保で、協会けんぽの保険者は全国健康保険協会、組合健保の保険者は健康保険組合です。

さらに「船員保険」というものがあります。

これは船員限定の医療保険で、実はもともと1939年に「船員保険法」というのができて、これは船員のための年金、医療保険、労働保険などが含まれた手厚い制度でした。この船員保険法は年金制度としては日本初です。

カリスマくん
カリスマくん

戦時中の船員は貴重だったので手厚い社会保障があったよ。

この船員保険法は、1986年に年金部分が厚生年金に統合され、労災や失業保険部分も労災保険と雇用保険に移行したため、現在の医療保険のみの形として残っています。

後期高齢者医療制度

1983年からの老人保健法が2008年に全面改正され、高齢者医療確保法ができたことで後期高齢者医療制度がスタートしました。

75歳以上になると、国民健康保険等に加入していた前期高齢者は、後期高齢者医療制度に加入することになります。

また、65歳以上75歳未満の一定の障害状態にある人も対象です。

年間40兆円という国民医療費のうち、75歳以上の後期高齢者の医療費は3割を占めています。

金額にすると一人当たり年間90万円(65歳未満は年間20万円)なので、75歳以上の医療費がいかに高いかわかるでしょう。

そのために後期高齢者医療制度をスタートさせ、税源の1割を保険料で賄うようになったのです。

カリスマくん
カリスマくん

それまでの老人保健法では財源に後期高齢者の保険料は拠出されてなかったんだ。

医療保険の給付内容

様々な医療保険制度を見てきましたが、どの医療保険に入っていても基本的に受けられる以下の給付は同じです。見ていきましょう。

第五十二条 被保険者に係るこの法律による保険給付は、次のとおりとする。
一 療養の給付並びに入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費及び移送費の支給
二 傷病手当金の支給
三 埋葬料の支給
四 出産育児一時金の支給
五 出産手当金の支給
六 家族療養費、家族訪問看護療養費及び家族移送費の支給
七 家族埋葬料の支給
八 家族出産育児一時金の支給
九 高額療養費及び高額介護合算療養費の支給

療養の給付

我々が最も身近に感じる医療保険の制度はこれですね。

上で挙げたように医療保険には様々な種類がありますが、どれに加入しても療養給付を受けられます。

通院した時に医療費の自己負担額1~3割がありますが、この程度の支払いで済んでいるのは医療保険からの療養給付があるからです。

<自己負担額>
~小学校入学前:2割
~70歳まで:3割
~75歳まで:2割(現役並所得者は3割)
75歳以上:1割~2割(現役並所得者は3割)
医療費の自己負担割合

高額療養費制度

療養給付で負担が抑えられている医療費ですが、それでも何度も通院したり大きな手術などをすると高額になってしまいます。

そんなときに、一定期間内に一定額以上となった医療費を返金する仕組みが高額療養費制度です。

高額療養費制度

グラフを見て分かるように、所得によって自己負担限度額が決められており、例えば年収330万円未満の人であれば、医療費がいくらかかっても約6万円を超えた分は戻ってきます。

年収が1160万円以上の人は、300万円の医療費がかかったら自己負担限度額は27万円程度ですね。

上のグラフは70歳未満の場合で、70歳以上の場合は別のグラフになります。

つまり、自己負担限度額は収入と年齢の2点で決められているということです。

1カ月間にかかった医療費が合算でき、さらに同居していなくても扶養関係にあれば世帯で合算できます。

ただし別の医療保険同士での合算はできません。

請求は2年で時効になります。

医療の現物給付が可能になり、窓口でいったん全額を建て替える必要がなくなりました。

カリスマくん
カリスマくん

高額療養費制度は1973年の福祉元年に創設されたんだったね。当時は月3万円を超える自己負担分を医療保険制度から支給する仕組みだったよ。

傷病手当金

傷病手当金は、普段生活をしていてケガをして働けなくなった場合、その日から4日目以降に給与の2/3程度(67%)が支給される手当です。

最長で1年6カ月支給されます(途中で退職しても支給されます)。

この期間は障害年金の初診日から障害認定日までの期間と一致します。

つまり障害を負って働けなくなった時、1年6カ月は傷病手当金、その後は障害年金を受給というケースを想定したものです。

勤務中に負ったケガなどは労災保険なので傷病手当金はもらえません。

出産手当金と出産育児一時金

出産育児一時金は医療保険の被保険者本人と被扶養者の出産の際に50万円支給される一時金です。

健康保険の被保険者が出産した場合は出産育児一時金。

健康保険の被扶養者が出産した場合は、家族出産育児一時金。

出産手当金は被保険者が出産して産前産後(出産前42日、出産後56日を限度として)に仕事ができなかったために給料がもらえない場合に標準報酬月額の2/3程度が支給されます。

出産育児一時金と出産手当金は併給できます。

出産手当金と育児休業給付

入院時食事療養費&入院時生活療養費

入院時の食事代は、食事療養標準負担額を患者が負担し、残りを入院時食事療養費として健康保険が負担します。ただし、65歳以上で療養病床に入院した場合は、食事代・居住費(光熱水費)について、生活療養標準負担額を患者が負担し、残りを入院時生活療養費として健康保険が負担します。

雇用保険

雇用保険といえば失業したときにもらえる失業給付(基本手当)を思い浮かべる人が多いかと思いますが、それ以外にも様々な給付があります。

育児で休業した時にもらえる「育児休業給付」や介護休業の時にもらえる「介護休業給付」も雇用保険による給付です。

社会福祉士国家試験取得のための養成校に通う費用の助成は「教育訓練給付」という雇用保険による給付です。

詳しく見てみると雇用保険には大きく分けて2種類の事業があります。

「失業等給付等」と「雇用保険二事業」です。

雇用保険と労災保険

失業等給付等は「失業等給付」と「育児休業給付」に分けられます。

「失業等給付等」=「失業等給付」+「育児休業給付」
カリスマくん
カリスマくん

失業等給付等って「等」が2回もでてきて変な名前だな。

雇用保険のメインは下の「失業等給付」で以下の4つの給付で構成されています。

<失業等給付>
求職者給付:失業したときにもらえる失業手当
雇用継続給付:介護休業給付など
教育訓練給付:資格取得のための受講費用などの助成
就職促進給付:失業手当受給中に就職が決まった場合の手当

もう1つ「雇用保険二事業」というのがありますが、これは「雇用安定事業」と「能力開発事業」になります。

労災保険

業務災害給付、通勤災害給付、二次健康診断給付の3種類あります。

<業務災害給付>
・療養補償給付
・休業補償給付
・障害補償給付
・遺族補償給付
・介護補償給付
・傷病補償年金
<通勤災害給付>
・療養給付
・休業給付
・障害給付
・遺族給付
・介護給付
・傷病年金

このように、勤務中や通勤中にケガをしたり障害を負ったり、それが原因で休業したり介護状態になったりしたときに支給される給付があるのが分かると思います。

「〇〇補償給付」というのが勤務中の災害、「〇〇給付」というのが通勤中の災害に対する給付です。

労災保険

介護保険

利用の流れ

①利用者が要介護認定を受ける

利用者はまず市町村の窓口に申請して、要介護認定を受けなければなりません。

介護の必要性を「要支援1~2」または「要介護1~5」に数値化して認定されます。

②ケアプランを作成する

下で紹介している「居宅介護支援」「介護予防支援」などのサービスでケアプランを作成してもらいます。

③ケアプランに沿ったサービスの提供事業者を選択する

介護保険制度は措置制度ではなく契約制度ですので、自分で事業者を選択できるんです。

④サービス提供事業者と利用契約を交わし、サービスを受ける

利用契約書や重要事項説明書で利用契約を交わします。

⑤サービス提供事業者が介護報酬の請求を行う

サービスを提供した事業者は、国民健康保険団体連合会(国保連)に対して介護報酬の請求を行います。

国保連は市町村に変わって介護報酬の審査支払業務を行っています。

<介護報酬>
・3年ごとに改定
・厚生労働大臣が社会保障審議会の意見を聴いて決定

介護保険サービス

1.介護給付(要介護1~5)
 ・居宅介護サービス
 ・居宅介護支援
 ・施設サービス(特養、老健など)
・地域密着型サービス
2.予防給付(要支援1~2)
 ・介護予防サービス
  ・介護予防支援
 ・地域密着型サービス
3.地域支援事業(要支援1~2、その他)
(1)介護予防・日常生活支援総合事業
 ・介護予防・生活支援サービス事業
 ・一般介護予防事業
(2)包括的支援事業
 ・地域包括支援センター事業  
 ・在宅医療・介護連携推進事業
 ・認知症総合支援事業
 ・生活支援体制整備事業
(3)任意事業
 ・介護給付費適正化事業
 ・家族介護支援事業
 ・介護相談員派遣事業

介護保険サービス

介護給付

居宅介護サービス&居宅介護支援

居宅介護サービス」は、ホームヘルプ、デイサービス、ショートステイなど、「居宅介護支援」はケアマネがケアプランを作成するサービスです。

介護保険サービスの事業所指定は、基本的に都道府県が行いますが、ケアプランを作成する「居宅介護支援」は市町村が指定します。

施設サービス

介護を必要とする高齢者の施設は3種類あります。

・介護老人福祉施設(特養)
・介護老人保健施設(老健)
・介護医療院

特別養護老人ホームは老人福祉法で規定されていますが、介護保険法では特養を「介護老人福祉施設」といいます。

特養を介護保険法で規定する介護老人福祉施設として都道府県が指定することで介護保険施設となります。

つまり特養は老人福祉法で規定される特別養護老人ホームとして市町村の措置によって入所するケースと、介護保険法で規定する介護老人福祉施設として契約で入所するケースがあるのです。

1963年に老人福祉法が制定されてから、現在でも特養は措置です。

カリスマくん
カリスマくん

1990年の福祉八法改正で老人福祉法の措置権限は都道府県から市町村へ移譲されたね。

地域密着型介護サービス

介護給付には地域密着型サービスがあります。これは要介護度の高い高齢者や認知症高齢者などが、住み慣れた地域で生活できるようにする目的で創設されました。

小規模多機能型居宅介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)などがあります。介護保険法における事業者指定は基本的に都道府県が行いますが、地域密着型サービスは地域の実情に詳しい市町村が指定します。

2.予防給付

予防給付は、介護給付と違って入所サービスはなく、通所型のサービスが主になります。訪問介護と通所介護は、地域支援事業の総合事業に移りました。

介護予防サービス&介護予防支援

「介護予防サービス」は、先ほどの居宅介護サービスと同じく、訪問、通所、短期入所とあり、「介護予防支援」はケアプランを作成するサービスです。

介護保険サービスの事業所指定は、基本的に都道府県が行いますが、ケアプランを作成する「介護予防支援」は市町村が指定します。

地域密着型介護予防サービス

介護給付と同じく地域密着型サービスがあります。

地域密着型サービスは地域の実情に詳しい市町村が指定します。

ここまでの介護給付と予防給付をまとめてみると、

  介護給付 予防給付 事業所指定
メインサービス 居宅介護サービス 介護予防サービス 都道府県・政令市・中核市
施設サービス 介護老人福祉施設等 なし 都道府県・政令市・中核市
ケアプラン作成 居宅介護支援 介護予防支援 市町村
地域密着型 地域密着型介護サービス 地域密着型介護予防サービス 市町村

3.地域支援事業

地域支援事業は「介護予防・日常生活支援総合事業」「包括的支援事業」「任意事業」の3つに分かれますが、この中でも「包括的支援事業」は主として地域包括支援センターが実施する業務としてよく出題されます。

介護予防・日常生活支援総合事業

介護予防・日常生活支援総合事業は「総合事業」とも呼ばれ、市町村が中心となって、地域の実情に応じて、住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進し、要支援者等の方に対する効果的かつ効率的な支援等を可能とすることを目指すものです。

カリスマくん
カリスマくん

「住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実することで、地域の支え合い体制づくりを推進」というのは聞こえはいいけど、アルバイトやボランティアなどの専門職でない人も使って支え合ってねということ。総合事業の財源は、保険者である市町村への給付の上限額が設定されていて、給付額だけでは不足する場合は、市町村が給付額を負担しなければならないんだ。介護予防給付の訪問介護と通所介護が総合事業に移行されたけど、結局、国はできるだけ総合事業に寄せていきたいんだね。

総合事業には大きく分けて「介護予防・生活支援サービス事業」と「一般介護予防事業」があります。

「介護予防・生活支援サービス事業」は、要支援者の訪問介護と通所介護(デイサービス)です。「一般介護予防事業」は、市区町村が住民の互助や民間サービスと連携し、高齢者の生活機能の改善や生きがい作りを重視した介護予防に役立つ事業のことです。

包括的支援事業

包括的支援事業には以下の事業があります。

<包括的支援事業>
・地域包括支援センター事業:地域包括支援センターが実施
・在宅医療・介護連携推進事業:高齢者が退院するときに医療と介護の連携調整
・認知症総合支援事業:認知症初期集中支援チームで最長6カ月集中支援
・生活支援体制整備事業:生活支援コーディネーター協議体を設置

とくに「地域包括支援センター事業」には以下の5種類ありますので知っておきましょう。

<地域包括支援センター事業>
〇介護予防ケアマネジメント業務
〇総合相談支援業務
〇権利擁護業務
〇ケアマネジメント支援業務
〇地域ケア会議の充実

間違いやすいのは、ケアマネジメント支援業務です。これは高齢者ではなくケアマネージャーへの支援です。

また地域ケア会議については2015年から努力義務になっており、地域包括支援センター (市町村)が設置します。地域ケア会議では地域の様々な専門職が集まって個別ケースの課題解決を行い、地域に共通した課題を明確化していきます。その上で地域に共通した課題を解決するための資源開発や地域づくり、介護保険事業計画への反映を行っていきます。

任意事業

任意事業も時々出題されますが、特に「介護相談員派遣事業」の介護相談員はボランティアなので、高齢者と専門機関の橋渡し程度の役割しか担えないことを覚えておいてください。

・介護給付費適正化事業
・家族介護支援事業
・介護相談員派遣事業

財源

介護保険制度の財源

上図にあるように、介護保険の財源は事業によって負担割合が2種類あるので覚えておきましょう。

介護給付と予防給付、地域支援事業の一部は、保険料1/2、国1/4、都道府県1/8、市町村1/8でわかりやすいのですが、それ以外の事業については保険料負担割合が減って、公費負担割合が増えます。

要介護認定について

要介護認定はコンピュータによる一次判定のあと、市町村が設置する「介護認定審査会」が二次判定を行います。介護認定審査会は保健医療福祉の学識経験者5名程度で構成されています。

カリスマくん
カリスマくん

障害支援区分認定も市町村だね。

こういった専門的判定は普通は都道府県が行うのですが、介護保険サービスも障害福祉サービスも主体は市町村なので、このようになっています。

介護認定審査会と名称の似ている介護保険審査会」は、不服申立てをする都道府県の機関です。

名称が似ていてややこしいですが頻出ですので覚えてください。

事業者指定とサービス支給決定

介護保険制度は市町村が保険者なので基本的には「サービスの支給決定」は市町村が行います。

一方で「事業者の指定」については基本的に都道府県が行います。

これは障害福祉でも同じです。

カリスマくん
カリスマくん

このあたりは「都道府県と市町村の役割」で取り上げるのでご心配なく。

だたし例外があって居宅介護支援介護予防支援地域密着型サービスは市町村が指定を行います。

カリスマくん
カリスマくん

居宅介護支援や介護予防支援はケアプランを作成するサービスだよ。障害福祉でもサービス等利用計画を作成する計画相談支援は市町村が指定するよ。

事業所の指定は6年ごとに更新が必要で、指定取消から5年経過しないと新たに指定を受けられません。

介護保険関連の機関

機関 設置 目的など
財政安定化基金 都道府県 介護保険制度の財政安定化
介護認定審査会 市町村 要介護認定
介護保険審査会 都道府県 要介護認定などの不服申立て

要介護認定は市町村が行うので、その不服申し立ては「都道府県」が設置する介護保険審査会に行います。介護保険審査会は、被保険者を代表する委員(3人)、市町村を代表する委員(3人)、公益を代表する委員(3人以上で政令で定める基準に従い条例で定める員数)で構成されます。

過去問

第24回 問題64

次の記述のうち、健康保険法における入院時生活療養費の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 特定長期入院被保険者が対象である。
2 一般病床に入院中の者が対象である。
3 食費と居住費の全額が給付される。
4 入院するための移送費が含まれる。
5 高額療養費の算定の対象である。

1 特定長期入院被保険者が対象である。
正しいです。特定長期入院被保険者とは65歳以上の療養病床に入院している被保険者なので、対象です。

2 一般病床に入院中の者が対象である。
誤りです。一般病床ではなく療養病床に入院中であることが要件になっています。

3 食費と居住費の全額が給付される。
誤りです。全額ではなく一部が給付されます。

4 入院するための移送費が含まれる。
誤りです。入院するための移送費は健康保険法の給付に含まれますが、入院時生活療養費には含まれません。

5 高額療養費の算定の対象である。
誤りです。入院時生活療養費における自己負担分は高額療養費の算定対象外です。

第21回 問題64

国民健康保険の高額療養費制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 入院時食事療養費は支給対象である。
2 入院時生活療養費は支給対象である。
3 70歳未満の者の自己負担限度額は1年単位で設定される。
4 障害のある被保険者の自己負担限度額は障害支援区分に応じて設定される。
5 保険医療機関窓口での支払を自己負担限度額までに抑えられる制度がある。

1 入院時食事療養費は支給対象である。
誤りです。入院時食事療養費における自己負担分は高額療養費の算定対象外です。

2 入院時生活療養費は支給対象である。
誤りです。入院時生活療養費における自己負担分は高額療養費の算定対象外です。

3 70歳未満の者の自己負担限度額は1年単位で設定される。
誤りです。年齢に関わらず、自己負担限度額は月単位で設定されています。

4 障害のある被保険者の自己負担限度額は障害支援区分に応じて設定される。
誤りです。自己負担限度額は所得や年齢に応じて算出され、障害支援区分に応じて設定はされません。

5 保険医療機関窓口での支払を自己負担限度額までに抑えられる制度がある。
正しいです。基本的には月の自己負担上限を超えてもいったんは窓口で支払う必要がありますが、限度額適用認定証を提示すれば、窓口での支払いが一定の金額に抑えられます。

第24回 問題65

Kさん(42歳)は、17歳の時に統合失調症と診断された。その後、現在まで精神科診療所への通院を続けている。大学を卒業後に初めて就職をしたものの、体調を崩し仕事は長続きしなかった。その後も、何度か就職するも病状が悪化して半年も経たずに退職することを繰り返していた。Kさんは直近の2年間は働いておらず、親亡き後の生活における経済的不安を抱えるようになった。そのことを知った通院する精神科診療所の精神保健福祉士は、Kさんが受給できる可能性のある障害者に対する経済的な支援制度の申請を提案した。
次のうち、精神保健福祉士がKさんに申請を提案したものとして、適切なものを1つ選びなさい。
1 障害基礎年金
2 障害厚生年金
3 障害手当金
4 特別障害者手当
5 特別障害給付金

選択肢1が正解です。障害基礎年金は、国民年金に加入する20歳に達する前に障害の初診日があった場合も(保険料を支払っていないのに)20歳から支給されます。ただしこの場合は所得制限があります。

第25回 問題63

介護保険制度に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。
1  要介護状態区分は、1~6まで設定されている。
2  要介護認定・要支援認定には、有効期間がある。
3  第2号被保険者であっても、初老期における認知症である場合、要介護認定を受けることができる。
4  予防給付は、要介護の認定を受けた人でも利用できる。
5  救護施設に入所している者も、介護保険の給付を利用できる。

1  要介護状態区分は、1~6まで設定されている。
誤りです。要介護状態区分は1~5です。障害支援区分は1~6です。

2  要介護認定・要支援認定には、有効期間がある。
正しいです。

3  第2号被保険者であっても、初老期における認知症である場合、要介護認定を受けることができる。
正しいです。第2号被保険者の場合は、特定疾病で要介護状態になった場合に限り、給付を受けられます。特定疾病には「初老期における認知症」が含まれます。

4  予防給付は、要介護の認定を受けた人でも利用できる。
誤りです。予防給付は要支援の認定を被保険者が受ける給付です。

5  救護施設に入所している者も、介護保険の給付を利用できる。
誤りです。生活保護法に規定される救護施設は、介護保険の適用除外施設です。他にも、障害者総合支援法で規定される障害者支援施設なども適用除外施設になります。

第26回 問題63

医療保険制度に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1  75歳以上の高齢者等は、他の医療保険から独立した公的医療保険に加入する。
2  国民健康保険の保険者は、国である。
3  医療保険は、現金給付ではなく現物給付である。
4  居宅サービス計画に基づく訪問看護の費用は、医療保険から支払われる。
5  高額療養費の自己負担額は、一律に設定されている。

1  75歳以上の高齢者等は、他の医療保険から独立した公的医療保険に加入する。
正しいです。後期高齢者医療制度に加入します。

2  国民健康保険の保険者は、国である。
誤りです。国民健康保険の保険者は、都道府県及び市町村です。

3  医療保険は、現金給付ではなく現物給付である。
誤りです。医療保険には傷病手当金や出産手当金のような現金給付も、療養の給付のような現物給付もあります。

4  居宅サービス計画に基づく訪問看護の費用は、医療保険から支払われる。
誤りです。訪問看護の費用は介護保険から支払われます。

5  高額療養費の自己負担額は、一律に設定されている。
誤りです。高額療養費の自己負担額は、加入者の年齢や所得によって、その月の自己負担限度額が定められます。

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