アルコール依存症、ギャンブル依存症、薬物依存症を見てきました。ここでは横断的な内容をまとめます。
依存症
依存症とはやめたくてもやめられない状態に陥ることですが、その種類は「物質への依存」と「 プロセスへの依存」の2種類に分けられます。
物質への依存
アルコールや薬物といった精神に依存する物質を原因とする依存症状のことを指します。
依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなり、
次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます(一部の物質依存では使う量が増えないこともあります)。
プロセスへの依存
ギャンブル依存症のように、物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。
どちらにも共通していることは、繰り返す、より強い刺激を求める、やめようとしてもやめられない、
いつも頭から離れないなどの特徴がだんだんと出てくることです。
依存症支援
クラフト(CRAFT)
クラフト(CRAFT:Community Reinforcement And Family Training)は飲酒問題や薬物問題に悩む家族のためにアメリカで開発されたプログラムです。アルコール依存症や薬物依存症の本人と対立せずに支援する家族等からのアプローチ方法で、例えば患者本人が治療を拒否しているような場合に、このプログラムが有効です。
・「私」という一人称を主語にして本人に思いを伝える
・肯定的な言い方をする
・簡潔に言う
・具体的な行動に言及する
・自分の感情に名前をつける
・責任の一部を引き受ける
・思いやりのある発言をする
・支援を申し出る
スマープ(SMARPP)
スマープ(SMARPP:Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program)は2006年に旧せりがや病院で開発された薬物再使用防止プログラムです。薬物やアルコールなどの依存症の回復に用いられています。
グループワークを通して依存症について学習しながら依存症からの回復を目指します。
自助グループ
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ここは頻出だから確実に覚えておこうね。
依存症 | 患者本人の自助グループ | 患者の家族や友人の自助グループ |
---|---|---|
アルコール | アルコホーリクス・アノニマス(AA) 断酒会(家族も可) |
アラノン(Al-Anon) |
ギャンブル | ギャンブラーズ・アノニマス(GA) | ギャマノン(Gam-Anon) |
薬物 | ナルコティクス・アノニマス(NA) | ナラノン(Nar-Anon) |
過去問
第27回 問題40、41、42
次の事例を読んで、問題40 から問題 42 までについて答えなさい。
〔事 例〕
ある日、市役所の精神保健に関する相談窓口にA さん(43歳)が来庁し、担当のB精神保健福祉士に話をした。Aさんによると、会社員である夫(45歳)は、日頃の仕事のストレスに起因する過度の飲酒が原因で体調を崩し、身体疾患の治療のため入院をした。その後、 退院を迎えるに当たり、Aさんと夫は,主治医から「体調は落ち着きましたが、アルコール依存症の可能性があるので,精神科の受診を勧めます」と提案を受けた。ところが、退院後、夫に精神科を受診するよう話したが全く聞こうとせず、激しく怒り出すようになった。また、夫が飲酒を再開してしまい、そのことについて、Aさんも夫に対し「なぜお酒を飲むの」と怒りの感情をぶつけたことから夫婦関係は悪化した。自分の力だけではどうにもならないと感じるようになり相談窓口を訪れたとのことであった。(問題40)
Aさんの話からB精神保健福祉士は、精神保健福祉センターで実施されているプログラムを紹介した。それは、アルコール依存症が疑われる人が精神科を受診しようとしない時に、本人のキーパーソンとなる人に介入することで、本人を受診につなげるための包括的なプログラムである。その説明を受け、Aさんからはプログラムへの参加の意思が示された。(問題41)
このプログラムに参加するようになり、しばらくして夫は精神科病院を受診することができた。夫は2か月休職し、入院治療を受けたことで自身の病状についての理解が進んだ。退院後間もなく、Aさんは夫と共に退院の報告を兼ねてB精神保健福祉士のもとを訪れた。夫は「いろいろありがとうございました。無事に退院したのですが、実は、ストレスがたまるとまた飲酒しそうで怖いです。どうしたら良いでしょうか」と語り、Aさんも「夫が飲酒を再開しないために、私も夫と一緒にやれることを探したいです」と述べた。B精神保健福祉士は、精神科の主治医に相談することも重要であることを説明しつつ、家族も参加できるアルコール依存症の患者本人を対象とした自助グループを紹介した。(問題42)
次の記述のうち、この時点のB精神保健福祉士の対応として、適切なものを1つ選びなさい。
1 夫のケアを担うAさんの能力について評価を行う。
2 Aさんの怒りの感情や無力感に対して肯定的に関わる。
3 夫の入院治療を強く勧める。
4 夫の客観的情報の収集を優先して行う。
5 Aさんがイネイブラーとして夫を支える重要性を説明する。
選択肢2が正解です。
次の記述のうち、このプログラムの特徴として、正しいものを1つ選びなさい。
1 対立的手法を積極的に活用する。
2 日本で開発されたものである。
3 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。
4 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。
5 アルコール依存症に特化したプログラムである。
このプログラムはアメリカで開発されたCRAFTだと思われます。
1 対立的手法を積極的に活用する。
誤りです。対立的手法は積極的に用いません。
2 日本で開発されたものである。
誤りです。アメリカで開発されました。
3 家族が「私」という一人称を主語にして、患者本人に思いを伝える方法を学ぶ。
これが正解です。
4 専門職から患者本人への直接的な働きかけに重きを置く。
誤りです。専門職からの直接的な働きかけは重視しません。
5 アルコール依存症に特化したプログラムである。
誤りです。アルコール依存症に限らず薬物依存症等でも使えます。
次のうち、B精神保健福祉士が紹介した自助グループとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 断酒会
2 ギャマノン(GAM-ANON)
3 アラノン(Al-Anon)
4 ナラノン(Nar-Anon)
5 ナルコティクス·アノニマス(NA)
アルコール依存症患者本人の自助グループで家族も参加できるものは、選択肢1の断酒会になります。
第17回 問題68
大企業に勤務する営業職のJさん(45歳、男性)は、大学卒業後、仕事の付き合いでほぼ毎日深夜まで飲酒するという生活をずっと続けてきた。しかしこの年で、前夜の記憶を失くすことが増え、接待の席でも酔って失敗するようになった。その度に陳謝し、酒量を控えると宣言するもうまくいかず、とうとう得意先を失いかけるという事態に至った。Jさんは、上司からの勧めで、産業医の診察を受け、アルコール依存症と診断され、病気の存在とその特徴について説明を受けた。そして、企業内のK精神保健福祉士から専門医療機関や自助グループへの参加の意義の説明と紹介を受けた。
次のうち、Jさんに紹介した資源として、適切なものを2つ選びなさい。1 アラノン(Al-Anon)2 アルコホーリクス・アノニマス(AA)3 ナルコティクス・アノニマス(NA)4 断酒会(全断連)5 ダルク(DARC)
アルコール依存症本人の自助グループですので、選択肢2と4が正解です。
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次からは、心理的支援に入っていきます。まずは心理療法から。
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