児童虐待
2000年に児童虐待防止法が制定されました。
対象:18歳に満たない者
行為主体:「保護者」
虐待類型:「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「放置(ネグレクト)」
通報義務:児童虐待を受けたと思われる児童を発見した者は、速やかに、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない
通報を受けた市町村は児童相談所に送致するかの判断をし、一時保護をすべきであると判断すれば都道府県知事又は児童相談所長に通知します。
高齢者虐待
2005年に高齢者虐待防止法が制定されました。
対象:65歳以上の高齢者
行為主体:「養護者」「養介護施設従事者等」
虐待類型:「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「放置(ネグレクト)」「経済的虐待」
通報義務:生命または身体に重大な危険が生じている場合に市町村への通報義務あり
高齢者虐待防止法では、養護者と養介護施設従事者等による虐待が定義されており、家族や施設職員から叩かれた等、全て虐待に該当します。
通報義務については発見者や状況によって以下のように義務、努力義務が課せられます。
<養護者による高齢者虐待>
①被虐待高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合 ⇒ 通報義務
② ①以外の場合 ⇒ 努力義務
<養介護施設従事者等による高齢者虐待>
① 当該養介護施設又は養介護事業において業務に従事する養介護施設従事者等 ⇒ 通報義務
② ①以外の発見者(被虐待高齢者の生命又は身体に重大な危険が生じている場合) ⇒ 通報義務
③ ①②以外の発見者 ⇒ 努力義務
障害者虐待
2011年に障害者虐待防止法が制定されました。
対象:障害者基本法に規定する障害者
行為主体:「養護者」「施設従事者」「使用者」
虐待類型:「身体的虐待」「心理的虐待」「性的虐待」「放置(ネグレクト)」「経済的虐待」
通報義務:虐待を受けたと思われる障害者を発見した者はただちに市町村に通報義務あり(使用者による虐待の場合は市町村または都道府県に通報義務)
障害者虐待防止法で特徴的なのは使用者による虐待が定義されていることです。
養護者による虐待では通報を受けた市町村は都道府県への報告義務はありませんが、施設従事者による虐待では市町村は都道府県へ報告しなければなりません。
さらに使用者からの虐待では市町村又は都道府県への通報義務、通報された市町村は都道府県に報告し、都道府県は都道府県労働局へ通知します。
精神障害者への虐待
1984年、栃木県宇都宮市にある精神科病院(宇都宮病院)で、看護職員らの暴行によって患者が死亡するという痛ましい虐待事件が発生しました。これを機に日本の精神医療のあり方や社会復帰施策が不十分さが国際的に批判され、当時の精神衛生法を見直すきっかけになりました。そして、1987年、精神保健法が成立し、精神障害者の人権擁護や社会復帰の促進がうたわれました。しかし、その後も現在でも、精神科病院内での虐待はなくなっていません。
2024年4月から精神保健福祉法が改正され、精神科病院の業務従事者による障害者虐待について、都道府県等への虐待通報が義務化されました。
精神保健福祉法 第四十条の三
精神科病院において業務従事者による障害者虐待を受けたと思われる精神障害者を発見した者は、速やかに、これを都道府県に通報しなければならない。
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今まで通報義務がなかったことが驚きだよ。
過去問
第22回 問題83
虐待や配偶者暴力等の防止・対応等に関する関係機関の役割として、正しいものを1つ選びなさい。
1 「児童虐待防止法」において、母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の長は、職員に臨検及び捜索をさせることができる。
2 「障害者虐待防止法」において、基幹相談支援センターの長は、養護者による障害者虐待により障害者の生命または身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、職員に立入調査をさせることができる。
3 「DV防止法」において、警視総監もしくは道府県警察本部長は、保護命令を発することができる。
4 「高齢者虐待防止法」において、市町村は、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について、老人福祉法の規定による措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとする。
5 「高齢者虐待防止法」において、市町村が施設内虐待の通報を受けたときは、市町村長は、速やかに警察に強制捜査を要請しなければならない。
(注)1「児童虐待防止法」とは、「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。
(注)2「障害者虐待防止法」とは、「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
(注)3「DV防止法」とは、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」のことである。
(注)4「高齢者虐待防止法」とは、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」のことである。
1 「児童虐待防止法」において、母子健康包括支援センター(子育て世代包括支援センター)の長は、職員に臨検及び捜索をさせることができる。
間違いです。母子健康包括支援センターの長ではなく、都道府県知事です。
2 「障害者虐待防止法」において、基幹相談支援センターの長は、養護者による障害者虐待により障害者の生命または身体に重大な危険が生じているおそれがあると認めるときは、職員に立入調査をさせることができる。
間違いです。基幹相談支援センターの長ではなく、市町村長です。
3 「DV防止法」において、警視総監もしくは道府県警察本部長は、保護命令を発することができる。
間違いです。警視総監もしくは道府県警察本部長ではなく、裁判長です。
4 「高齢者虐待防止法」において、市町村は、養護者による高齢者虐待を受けた高齢者について、老人福祉法の規定による措置を採るために必要な居室を確保するための措置を講ずるものとする。
これが正解です。
5 「高齢者虐待防止法」において、市町村が施設内虐待の通報を受けたときは、市町村長は、速やかに警察に強制捜査を要請しなければならない。
間違いです。「市町村長は、当該高齢者の住所又は居所の所在地を管轄する警察署長に対し援助を求めることができる。」と規定されていますが、「速やかに警察に強制捜査を要請しなければならない。」とは規定されていません。
第27回 問題2
次のうち、精神科病院において業務従事者による精神障害者への虐待を発見した者が「精神保健福祉法」に基づいて取るべき行動として、正しいものを 1つ選びなさい。
1 国民健康保険団体連合会への申立て
2 都道府県への通報
3 警察署への通報
4 地方裁判所への申立て
5 市町村への通報
(注)「精神保健福祉法」とは、「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」のことで
ある。
選択肢2が正解です。2024年度から精神科病院において業務従事者による精神障害者への虐待を発見した者は、都道府県の通報義務が課せられています。
次の記事
次は、児童虐待とDV防止法について。
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