歴史
WHO総会で採択された順番に見ていきましょう。
1948年 国際疾病分類ICD
国際疾病分類(ICD:International Classification of Diseases)は、医学モデルに基づいた疾病の分類で、現在でも版を重ねて使い続けられています。
1980年 国際障害分類ICIDH
国際障害分類(ICIDH:International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps)は、疾患が原因となって機能障害が起こり、それから能力障害が生じ、それが社会的不利を引き起こすというモデルです。
この機能障害、能力障害、社会的不利という3つの階層に分けて考えることで、例えば、仮に機能障害があっても能力障害を解決することができるし、能力障害があっても社会的不利を解決することができるという柔軟な考え方が可能になりました。
2001年 国際生活機能分類ICF
国際生活機能分類(ICF:International Classification of Functioning, Disability and Health)は、障害や病気を持つ人だけでなくすべての人に適用できるモデルです。
ICIDHが障害に着目したモデルであったのに対し、ICFでは障害というマイナス面ではなく、以下のようにICIDHで用いられていた用語を言い換えて用いられています。
ICF | ICIDH |
機能障害 | 機能・形態障害 |
活動制限 | 能力障害 |
参加制約 | 社会的不利 |
ICIDHで用いられた3つの階層構造は、さらに進んだ形でICFに引き継がれています。
ICFとICIDHの違いを見てみましょう。
健康状態としてICIDHでは疾患や外傷のみと捉えるのに対して、ICFではそれ以外にも妊娠や加齢、ストレス状態なども含めた幅広い概念になりました。
つまり、ICIDHでは障害や病気の人のみが対象だったのに対して、ICFでは全ての人が対象になったのです。
さらに、ICFでは背景因子が導入されたことも大きな変化です。
対象 | 健康状態の捉え方 | 背景因子 | |
ICIDH | 障害や病気の人 | 疾患や外傷 | なし |
ICF | 全ての人 | 疾患や外傷、妊娠や加齢、 ストレス状態なども含む幅広い概念 |
環境因子 個人因子 |
現在はICFとICDが相互補完的に用いられており、ICIDHは過去のモデルになっています。
国際生活機能分類ICF
生活機能の3要素
それでは、ここからはICFの覚え方、覚える順序を見ていきます。
ICFの「F」は「生活機能(Functioning)」です。
ICFでは、人の健康状態を決めているのは、3つの要素から構成される「生活機能」と考えます。
生活機能(Function)の3要素とは「心身機能・身体構造」、「活動」、「参加」です。
この3要素を確実に覚えましょう。
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これはICIDHの機能障害、能力障害、社会的不利をそれぞれ言い換えたものだったね。
まずは下の図を自分で書けるようになってください。

生活機能3要素 | 意味 | レベル | 具体例 | 評価方法 |
---|---|---|---|---|
心身機能身体構造 | 身体の生理的機能 | 生物 | 身長、体重、 認知機能、麻痺など |
生理的システム、解剖学的構造の変化 |
活動 | 個人による課題や行為の遂行 | 個人 | 食事や入浴など、ADL | 能力と実行状況 |
参加 | 生活や人生場面への関わり | 社会 | 地域の集まりへの参加、結婚式への出席、コンクールへの応募など | 能力と実行状況 |
さらに、ICFでは障害(Disability)について次のように捉えています。
「機能障害」「活動制限」「参加制約」です。
この3つは、生活機能の3つの要素と以下のように対応しています。
生活機能の3つの要素を覚えていれば、それぞれが障害になったときにどうなるかを考えれば、すぐに単語は出てきます。
生活機能 | 障害 |
---|---|
心身機能・身体構造 | 機能障害 |
活動 | 活動制限 |
参加 | 参加制約 |
背景因子
3つの要素から構成される生活機能は、「環境因子」と「個人因子」の2因子と密接に関連し合っています。
環境因子
環境因子には、自宅や交通機関、自然環境のような物的環境だけでなく、家族や職場の同僚などの人的環境、そして福祉や医療などの制度的環境、さらには社会の意識や世論なども含まれます。
環境因子は生活機能と障害への外的影響を与え、促進因子と阻害因子があります。
促進因子とはバリアフリー等のこと、逆に阻害因子は段差があって車いすが通れない等、このような環境的な状態です。
個人因子
個人因子は、年齢や性別、職業、ライフスタイルなど、その人固有の特徴で、価値観や個性、健康状況以外の個人の人生や生活の特別な背景のことです。
個人因子は生活機能と障害への内的影響を与えます。
最終的に、以下の図で完成です。自分で書けるように何度も書いて覚えましょう。

図のポイントは、健康状態が生活機能3要素(「心身機能・身体構造」「活動」「参加」)と関わっており、さらに生活機能3要素は背景因子2要素(環境因子、個人因子)と関わっているということです。
相互補完的な関係
ICFの各要素は、双方向の矢印で表現されていて、お互いが相互作用し相互補完的に関係し合っていることを表しています。
生活機能の3つの要素も双方向的で相互補完的なので、例えば、心身機能が低下しても活動を活発化させて回復させるとか、社会参加を増やして活動を活発化させるとかで補うことができます。
過去問
第20回 問題11
次のうち、国際生活機能分類( ICF )でいう心身機能の改善に焦点を当てたものとして、正しいものを1つ選びなさい。1 幻聴を減らすための薬物療法2 精神疾患について理解を深めるための心理教育3 偏見を持たずに精神障害者を雇用する職場を増やす啓発活動4 高次脳機能障害の人にも使い方が分かりやすい道具の開発研究5 認知症の人が生活しやすいグループホームの在り方の研究
1 幻聴を減らすための薬物療法
これが正解です。心身機能の改善に焦点を当てています。
2 精神疾患について理解を深めるための心理教育
これは「活動」に焦点を当てています。
3 偏見を持たずに精神障害者を雇用する職場を増やす啓発活動
これは「参加」に焦点を当てています。
4 高次脳機能障害の人にも使い方が分かりやすい道具の開発研究
これは「環境因子」に焦点を当てています。
5 認知症の人が生活しやすいグループホームの在り方の研究
これも「環境因子」に焦点を当てています。
第17回 問題38
次のうち、ICIDH(国際障害分類)からICF(国際生活機能分類)への改定に際して重視された内容として、正しいものを2つ選びなさい。1 構成要素間の相互作用2 各疾病の諸帰結3 障害を個人の次元でとらえる視点4 福祉的サービスの必要性5 環境因子の影響
選択肢1と5が正解です。
第26回 問題11
- 次のうち、国際生活機能分類(ICF)でいう心身機能の改善に焦点を当てたものとして、正しいものを1つ選びなさい。
1 統合失調症患者の家族への心理教育
2 うつ病患者への薬物療法- 3 高次脳機能障害の人にも使い方が分かりやすい道具の開発研究
4 認知症の人が生活しやすいグループホームの在り方の研究- 5 偏見をもたずに精神障害者を雇用する職場を増やす啓発活動
1 統合失調症患者の家族への心理教育
これは「活動」です。
2 うつ病患者への薬物療法
これが正解「心身機能・身体構造」の改善に焦点が当てられたものです。
3 高次脳機能障害の人にも使い方が分かりやすい道具の開発研究
これは「環境因子」です。
4 認知症の人が生活しやすいグループホームの在り方の研究
これは「環境因子」です。
5 偏見をもたずに精神障害者を雇用する職場を増やす啓発活動
これは「参加」です。
次の記事
次は、国際疾病分類ICDについて。
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