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【諸外国の精神保健福祉】アメリカ、イギリス、イタリア、ニュージーランド、中国、韓国

諸外国の精神保健福祉精神医療&精神保健
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各国の精神保健福祉施策を見ていきましょう。

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アメリカ

アメリカにおける精神保健福祉のターニングポイントは、1963年の「ケネディ大統領教書」です。

「精神疾患及び知的障害に関する大統領教書(ケネディ大統領教書)」により脱施設化が大きく進み、精神科病院が解体され、地域精神保健センターが整備されました。

福祉系資格については、1955年に「認定ソーシャルワーカー(ACSW)」資格が創設されます。

そして近年、アメリカでは自らのリカバリーの体験を生かして、リカバリーの途上にある人へ支援をする「ピアスペシャリスト」が職業として認知されています。

さらに、ピアスペシャリストをそれぞれの州が認定をした「認定ピアスペシャリスト」という新たな職種も生まれています。

この「認定ピアスペシャリスト」は2000年にジョージア州で制度化されたのがはじまりで、2004年に「全米ピアスペシャリスト協会(NAPS)」、2006年には「ピアスペシャリスト全米同盟(PSAA)」が設立されています。

アメリカの精神保健福祉のターニングポイントは「ケネディ大統領教書」であること、

そして「認定ソーシャルワーカー」と「認定ピアスペシャリスト」は覚えておきましょう。

イギリス

イギリスでは、1990年に「国民保健サービスおよびコミュニティケア法」成立し、ケアマネジメントが導入されました。

その後、以下の年表を見てわかるように、ケアラー(介護者)支援が積極的に進められていきます。

1995年に「介護者法」が制定され、介護者の支援を保障します。

1999年の「精神保健のためのナショナル・サービス・フレームワーク(NSF、10年計画)」では、積極的アウトリーチや家族ケアラー支援等の充実が謳われました。

ヤングケアラーと呼ばれる若くして家族の介護を行う子供たちへの支援は、イギリスが最先進国となっています。

1990年 「国民保健サービスおよびコミュニティケア法」成立
1995年 「介護者(認識とサービス、ケアラーズアクト)法」制定
1999年 「精神保健のためのナショナル・サービス・フレームワーク(NSF、10年計画)」
2000年 ケアラ―ズ及び障害児法(サービスに代わる現金給付、休暇のバウチャー制度など)
2004年 ケアラ―ズ機会均等法(家族に労働、余暇活動の参加意思について確認)

フランス

フランスでは、精神科医療に代わり「セクター制度」が導入され、脱施設化が大幅に進みました。

これは一定の人口規模ごとにセクターを設け、そのセクターを統括する精神科医長に大きな裁量権を与え、精神科病床や施設を配置し治療と生活支援を一体的に実施するものです。

フランスの精神医療福祉については、この「セクター制度」だけ押さえておきましょう。

イタリア

イタリアの精神保健福祉のキーパーソンはフランコ・バザーリア(Franco Basaglia)です。

彼は、1978年に世界初の精神科病院廃絶法である「法律第180号(通称バザーリア法)」の制定に尽力しました。

バザーリア本人の名で呼ばれるこの法律では、精神科病院の新設、すでにある精神科病院への新規入院、1980年末以降の再入院を禁止し、予防・医療・福祉は原則として地域精神保健サービス機関で行うこととし、治療は患者の自由意志のもとで行われるという内容です。

イタリアの精神保健福祉といえば、この「バザーリア法」です。世界初の精神病院廃絶法であることを押さえておきましょう。

ニュージーランド

ニュージーランドの精神保健福祉は、1960年代まで大規模な国立精神科病院で入院治療中心でしたが、脱施設化へ向かっていきます。

その後のニュージーランドの精神保健福祉を語る上で、キーパーソンになるのがM.オヘイガン(Mary OʼHagan)という人です。

彼女はもともと精神疾患を患っていて、その経験から「当事者運動」を始めます。

1990年、オヘイガンは「精神科サバイバー・ネットワーク」立ち上げ、1998年にはNZ政府の精神保健委員会(Mental Health Commission:MHC)の初代委員になります。

1998年、精神保健委員会(MHC)より「ブループリント」が発表されます。委員を務めていたオヘイガンはリカバリーの概念を全てのサービスの基盤と考え、ブループリントに盛り込みました。

ブループリントは、「青写真、設計図」のことだね。

・1990年 当事者運動「精神科サバイバー・ネットワーク」立ち上げ by オヘイガン
・1998年 精神保健委員会(MHC)より「ブループリント」が発表
・2001年 「地域支援ワーカー」という国家認定資格スタート

ニュージーランドの精神保健福祉では、オヘイガンの「当事者運動」と「ブループリント」を覚えておきましょう。

中国

中国では、2006年に福祉専門職である「社会工作師」が国家資格化されています。

大学レベルで「社会工作師」の養成が行われていますが、給与が低いなどの問題で福祉職に就く人は少ない状態です。

中国では「社会工作師」という国家資格があることだけ、覚えておきましょう。

韓国

韓国では、精神障害者の長期収容や人権侵害が社会問題になっており、1995年に「精神保健法」という法律ができます。

精神保健法第7条には「精神保健専門要員」が規定されており、1998年に各保健所に「精神保健専門要員」を配置しました。

「精神保健専門要員」は、精神保健社会福祉士、精神保健看護師、精神保健臨床心理士の3専門職で構成されています。

韓国では、精神保健法で規定された「精神保健専門要員」という専門職があることを覚えておきましょう。

過去問

第23回 問題36 

次のうち、諸外国の精神保健医療福祉領域において資格化されている人材として、正しいものを2つ選びなさい。
この問題は出題時に「正しいものを1つ選びなさい」という問題だったので不適切問題になりました。
1 ニュージーランドにおける地域支援ワーカー
2 韓国における社会工作師
3 アメリカにおける認定ソーシャルワーカー
4 イギリスにおける認定ピアスペシャリスト
5 中国における精神保健専門要員

1 ニュージーランドにおける地域支援ワーカー
正しいです。

2 韓国における社会工作師
間違いです。社会工作師は中国です。

3 アメリカにおける認定ソーシャルワーカー
正しいです。

4 イギリスにおける認定ピアスペシャリスト
認定ピアスペシャリストを資格化しているのはアメリカです。

5 中国における精神保健専門要員
間違いです。精神保健専門要員は韓国です。

第22回 問題36 

諸外国の精神保健医療福祉の脱施設化及び地域ケアの歴史に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 イギリスでは、「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」により、積極的アウトリーチや家族ケアラー支援等の充実を図った。
2 ニュージーランドでは、「セクター制度」により、一定の人口規模ごとに、精神科病床、施設を配置し、治療と生活支援を一体的に実施した。
3 アメリカでは、精神保健サービス計画「ブループリント」を策定し、リカバリー概念をサービスの基盤とすることを明示した。
4 イタリアでは、「精神疾患及び知的障害に関する大統領教書」により、精神科病院を解体し、地域精神保健センターを整備した。
5 フランスでは、「法律第 180 号」により、精神科病院への新たな入院を禁止し、地域ケアと外来医療中心に転換した。

1 イギリスでは、「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」により、積極的アウトリーチや家族ケアラー支援等の充実を図った。
正しいです。イギリスはケアラー支援の最先進国です。
1999年に「精神保健に関するナショナル・サービス・フレームワーク」という精神保健に関する10年計画が発表され、7つの基準が示されました。
また、1995年に「介護者法」、2004年に「ケアラーズ機会均等法」が制定されました。

2 ニュージーランドでは、「セクター制度」により、一定の人口規模ごとに、精神科病床、施設を配置し、治療と生活支援を一体的に実施した。
間違いです。これはフランスの内容です。

3 アメリカでは、精神保健サービス計画「ブループリント」を策定し、リカバリー概念をサービスの基盤とすることを明示した。
間違いです。これはニュージーランドの内容です。オヘイガンの功績です。

4 イタリアでは、「精神疾患及び知的障害に関する大統領教書」により、精神科病院を解体し、地域精神保健センターを整備した。
間違いです。これはアメリカの内容です。「ケネディ大統領教書」と書いてしまうとすぐにアメリカとわかってしまいますね。

5 フランスでは、「法律第 180 号」により、精神科病院への新たな入院を禁止し、地域ケアと外来医療中心に転換した。
間違いです。これはイタリアの内容です。「バザーリア法」ですね。

第17回 問題36

諸外国の精神保健医療福祉政策に関する次の組み合わせのうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 イタリアーーーケネディ大統領教書(1963年)
2 アメリカーーー法律180号(バザーリア法)(1978年)
3 ニュージーランドーーー国民保健サービス及びコミュニティケア法(1990年)
4 韓国ーーー精神保健法(1995年)
5 イギリスーーーブループリント(1998年)

1 イタリアーーーケネディ大統領教書(1963年)
間違いです。ケネディ大統領教書はアメリカの政策です。

2 アメリカーーー法律180号(バザーリア法)(1978年)
間違いです。バザーリア法はイタリアの政策です。

3 ニュージーランドーーー国民保健サービス及びコミュニティケア法(1990年)
間違いです。国民保健サービスおよびコミュニティケア法はイギリスの政策です。

4 韓国ーーー精神保健法(1995年)
正しいです。

5 イギリスーーーブループリント(1998年)
間違いです。ブループリントはニュージーランドの政策です。

次の記事

次は、精神保健福祉法&精神保健福祉手帳について。

精神保健福祉法&精神保健福祉手帳
精神保健福祉法の歴史は以下の記事でやりました。精神衛生法→精神保健法→精神保健福祉法と変遷してきたのでしたね。ここでは精神保健福祉法の中身について詳しく見ていきます。精神保健福祉法精神保健福祉法の正式名...

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