様々なハラスメント
パワーハラスメント
職場におけるパワーハラスメントは、以下の①から③の全てを満たすものをいいます。
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
③ 労働者の就業環境が害されるもの
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パワハラやめて。
職場におけるパワーハラスメント防止については、労働施策総合推進法に以下の規定があります。
労働施策総合推進法 第三十条の二
事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
労働施策総合推進法の改正によって、2022年度から中小企業においても職場のパワーハラスメント防止措置が義務化されました。
セクシャルハラスメント
職場におけるセクシュアルハラスメントは、職場において行われる労働者の
意に反する「性的な言動」に対する労働者の対応によりその労働者が労働条件について不利益を受けたり、「性的な言動」により就業環境が害されることです。
性的な言動を行う者は、事業主、上司、同僚に限らず、取引先等の他の事業主又はその雇用する労働者、顧客、患者又はその家族、学校における生徒等もなり得ます。
男女とも行為者にも被害者にもなり得ますし、異性に対するものだけではなく、同性に対するものも該当します。また、被害を受ける者の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」であれば、セク
シュアルハラスメントに該当します。
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セクハラだめよ。
男女雇用機会均等法では、職場におけるセクシュアルハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。
男女雇用機会均等法 第11条
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力
した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱い
をしてはならない。
3 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる第1項の措置の実施に関し必要な協力を
求められた場合には、これに応ずるように努めなければならない。
マタニティハラスメント
マタニティハラスメントとは、妊娠・出産・育児に関して、女性労働者が職場で受ける不当な取扱いや嫌がらせのことです。
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マタハラやめて。
男女雇用機会均等法ではマタニティハラスメントを禁止しています。
男女雇用機会均等法 第九条
事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法では、職場におけるマタニティハラスメントについて、事業主に防止措置を講じることを義務付けています。
男女雇用機会均等法 第11条の3
事業主は、職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されることのないよう、当該女性労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
育児・介護休業法 第25条
事業主は、職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際
に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
過去問
第24回 問題3
Aさん(25歳、男性)は、職場でパワーハラスメントにあったことで、意欲低下や食欲低下、不眠などが続き出勤できなくなった。人事担当者は産業医及びAさんと相談し、部署を異動させたところ、Aさんの症状は7日後に改善した。
次のうち、Aさんの病名として、適切なものを1つ選びなさい。1 境界性パーソナリティ障害2 適応障害3 双極性感情障害4 病気不安症5 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
選択肢2が正解です。適応障害では、特定可能なストレス因子によって引き起こされる、著しい苦痛を伴い日常生活に支障をきたす感情面、行動面の症状がみられます。
第25回 問題15
次の記述のうち、労働と精神保健に関連する法律の説明として、正しいものを1つ選びなさい。
1 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度で高ストレス者と判定された労働者には、医師による面接指導を受ける義務がある。2 過労死等防止対策推進法が規定する過労死等の原因には、精神障害が含まれている。3 「男女雇用機会均等法」は、妊娠中及び産後の危険有害業務の就業制限を規定している。4 健康増進法は、事業者に対してパワーハラスメント防止のための措置を講じなければならないと規定している。5 労働契約法では、国が労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定することが規定されている。(注)「男女雇用機会均等法」とは、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」のことである。
1 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度で高ストレス者と判定された労働者には、医師による面接指導を受ける義務がある。
誤りです。義務ではありません。希望すれば受けられます。ストレスチェック制度についてはこちらを参照してください。
2 過労死等防止対策推進法が規定する過労死等の原因には、精神障害が含まれている。
正しいです。過労死等防止対策推進法第二条には過労死等について、業務過多による身体的な疾患による死亡だけでなく、業務による強いストレスで精神障害を発症し自殺した場合も過労死等に該当します。
3 「男女雇用機会均等法」は、妊娠中及び産後の危険有害業務の就業制限を規定している。
誤りです。これは労働基準法に規定されています。
4 健康増進法は、事業者に対してパワーハラスメント防止のための措置を講じなければならないと規定している。
誤りです。これは労働施策総合推進法に規定されています。
5 労働契約法では、国が労働者の心の健康の保持増進のための指針を策定することが規定されている。
誤りです。これは労働安全衛生法に規定されています。
第27回 問題15
職場でのハラスメントに関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。
1 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制·仕事の妨害は、パワーハラスメントに該当する。
2 労働者数300名未満の事業場では、ハラスメント対応の措置が事業主の努力義務となっている。
3 セクシュアルハラスメントの内容として、同性に対するものは対象外である。
4 マタニティハラスメントの禁止は、母子保健法で規定されている。
5 ハラスメントに起因する精神障害は、労働災害認定基準から除外されている。
1 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制·仕事の妨害は、パワーハラスメントに該当する。
正しいです。
2 労働者数300名未満の事業場では、ハラスメント対応の措置が事業主の努力義務となっている。
誤りです。2022年度から中小企業においても職場のパワーハラスメント防止措置が義務化されました。
3 セクシュアルハラスメントの内容として、同性に対するものは対象外である。
誤りです。セクシャルハラスメントには同姓に対するものも含まれます。
4 マタニティハラスメントの禁止は、母子保健法で規定されている。
誤りです。マタニティハラスメントの禁止は男女雇用機会均等法で規定されています。
5 ハラスメントに起因する精神障害は、労働災害認定基準から除外されている。
そんなことはありません。
次の記事
次は、性同一性障害特例法について。
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